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――本日の有兎家の喧嘩
高校の創立記念日。つまり雅、菜瑚芽、瑠羽斗は休みで家にいる。もちろん普段から在宅の千流と阿英も家にいる。そんな普通の平日に、いつも通り喧嘩が勃発しようとしていた。
🍬「……ない。」
🍄「え?」
🍬「僕のモンブランは?!」
⚔️「モンブラン?」
🍄「きた僕の○○シリーズ。今週何話やっけ?」
時刻は午前10時を回ったところ。朝ごはんにしては遅いし、昼ごはんにしては早すぎる。そのタイミングで冷蔵庫を開けた雅が、ぼそっと呟いたと思えば大きな声で叫び出す。モンブランは昨日雅が泰と買い物に行った帰りに買ってもらったもの。買って帰ってきたあと、もう夜ご飯の時間だったこともあり食べるのが先延ばしになった。
そんなモンブランが冷蔵庫に入っていなかったのだ。
🍬「お前らか?お前ら食べたか?ん?」
🍄「食べてないよ。」
⚔️「決めつけだけは許されんよ」
🍬「じゃあ誰が食べたっていうん?なぁ」
🍄「あえちゃん」
🍬「叫んで呼んでいい?」
⚔️「怒られるよ」
犯人探しは始まった。今日はみーちゃんが犯人の可能性はゼロ。つまり兄弟の中の誰かが犯人。
そんなところで、千流が部屋から降りてきた。
🐸「どうしたの。うるさい」
🍬「僕のモンブランがないの!!」
🐸「あぁ、モンブランね」
🍬「え、千流にぃ食った?」
🐸「いや、俺は食べてないよ、俺は」
含みを持たせて言う千流に怪訝な顔をする雅。でも雅は千流をかなり信頼しているため発言は一度信じる。
となってくると誰が食べたのか。
🐸「絶対喧嘩になるけど、俺犯人知ってるよ」
🍬「誰?!」
🍄⚔️「「じゃああえちゃんやん」」
🧸「え?何が?」
双子が綺麗に声を被らせた時、ちょうど阿英がリビングに降りてきた。
会話の流れは聞いていなかったようで、双子に名前を呼ばれた阿英はキョトンとした顔をしている。
🍬「“雅”って書いたんだけど!食ったら死刑って書いたんだけど!」
🍄「モンブランのどこに書いたんw」
⚔️「でもそれはある意味振りやん」
🍬「てことであえちゃん僕のモンブラン食べた?」
🧸「あ。食べた」
一瞬の沈黙。嵐の前の静けさ。
1日ぐらい経ったかと言うくらいの沈黙。実際は3秒くらい。千流の呆れたような声が静かな空気を破った後はもう想像通り。
🍬「流石に許されんよ…ねぇあえちゃん…表出んかいゴラァ!」
🧸「外出たら近所迷惑やしここでやろうや。かかってこいよ」
🍄「あえちゃん上から目線できる立場ちゃうくない?」
⚔️「結構100:0であえちゃんが悪いよね」
余裕そうに構える阿英と、今にも爆発しそうな雅。わなわなと震えていると思えば、阿英の後ろにクッションが回る。
ボフンッ!と言う音と共に阿英の後頭部にクッションが当たる。
🧸「いった、普通にくるか、やったるわ」
🍄「だから100:0であえちゃんが悪いって」
阿英が雅の目の前に詰めると、じっと瞳を見つめる。
阿英の能力は精神操作。相手の瞳を見つめることで相手の精神状態を動かす。
🍬「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
🧸「はい、静かにしといて」
🍬「食べ物の恨み舐めんなァ!」
🍄「お、あえちゃんの能力掻い潜った」
⚔️「いや止めなあかんやつやろ!」
🐸「にーげよ」
掴み掛かろうとする雅を瑠羽斗と菜瑚芽で必死に止めようとするものの、暴れる雅に振り回された瑠羽斗の腕が菜瑚芽の顔面にクリーンヒット。
🍄「いったぁぁぁぁ!!ちょ、ばといたい!」
⚔️「耳元で叫ばんで!うるさい!」
🍬「あえじ本当にゆるさねぇ!」
🧸「しつこい男は嫌われんで」
🍬「ウルセェ黙ってろバカやろおおおお!!」
🍄「ばとがその気なら俺も本気で行くで」
⚔️「いや僕悪ないやん!」
同じ空間で二つの喧嘩。そんな状態でちゃんと二つの喧嘩が行われるわけもなく、雅の投げたクッションが瑠羽斗に当たり、菜瑚芽の拳が阿英に当たり。いの一番に戦場から逃げ、さらにヒートアップした喧嘩をリビングの扉を挟んで様子を見ていた千流はついさっきまで飲んでいたコーヒーをズズッと一口飲み、ため息をひとつ。
🐸「うわぁ、ここ最近で一番ひどいな」
椅子が倒れ、カーテンがレールから外れて落ちる。雅の糸が阿英の手に巻き付いて阿英は身動きが取れなくなる。その阿英が身を捩った時に菜瑚芽の体に拳があたり、菜瑚芽が火を出して応戦しようとする。
流石に火事になる可能性があるので、千流は結界を張って他に被害が出ないようにする。
🐸「ほんと元気ねあの子達」
🍬「あっつい!なめちゃんばか!」
🧸「火傷する!」
🍄「そんときはばとが治してくれるやん」
⚔️「そんな便利じゃないし」
いつの間にか普通に会話し出した弟たちを見て、千流は今日何度目かもわからないため息をついた。
この日の夜、泰からの雷が落ちるのも見越して。