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高校で出会った友達。会ったときから、可愛いな、って思った。笑った顔も、怒った顔も、困ってる顔も。
「いいなぁ」って、自然に思ってしまった。
彼女は私にとって友達。
他の人より距離が近い。
ただの友達。
だからこそ、隣にいる理由も自然で、当たり前みたいにハグだってできる。
手が空いていたら、いつの間にか繋いでいる。
毎日おしゃべりして、嫌なことは愚痴って、くだらないことで笑って。
誰よりも距離が近い、そんな気がしていた。
周りから「お前らいちゃつくなよ!」なんて茶化されても、嫌じゃなかった。
むしろ、嬉しかった。
だって「仲が良い」と、ちゃんと周りが認めてくれている気がしたから。
でも、それはあくまで「友達だから」できること。
もしも――もしも、私が友達じゃなくなったら。
その距離も、手の温かさも、当たり前みたいな笑顔も、全部失ってしまう。
そう思うと、怖かった。
彼女はコミュ力が凄かった。私と出会った時も、寄り添ってきた。まるでそこにいて当たり前かのように。すぐに仲良くなった。
そんな彼女のいいところが嫌になる自分がいた。
他の子と仲良くしてたら何とも思えなくなってしまう。私と同じように手を繋いで、ハグして。私だけにして欲しい。他の子とは違うもっと近くにいたい。他の子と大きな差を見せつけて。周りからもそう思えてしまうほど近くにいたい。私をそばに置いてほしい。
彼女はよく「大好き〜!」って抱きついてきた。
私も自然に「私も大好き!」って返した。
「大好き」は簡単に言える。でもそれは、友達としての「大好き」に変わっていく。
私の胸の奥で膨らんでいる気持ちとは、きっと違う。
本当の気持ちを重ねても、きっと彼女には伝わらない。
みんなでふざけて告白ごっこをしたときのことを思い出す。
「好き〜!」と私が言ったら、彼女は笑いながらこう返した。
「私は推しと恋人だから〜!」
場は笑いに包まれて、何もなかったみたいに流れていった。
だけどその瞬間、私の「好き」が、ただの友達の「好き」にすり替えられたようで、胸の奥が少しだけきゅっとした。
なんて可愛い子なんだろう。
なんてずるい子なんだろう。
呼ばれればすぐに隣に座って、手を繋ぐときは必ず恋人繋ぎで。他の子よりも私に真っ直ぐ飛びついてくる。
誰よりも近くて、近くて、仕方ないのに。
それでも「ダメなんだよなぁ」って、思うしかなかった。
そして時間は流れて――卒業の日が来た。
「友達としてずっといる」もうあの毎日は続かない。
「連絡取るね!また会おう!」
「バイバイ!」
そう言い合って別れたけれど、結局、卒業してから一度も会っていない。連絡も取っていない。
私が保ってしまったのだ。自分からぐいぐい会いに行かないほうがいい。友達としての距離でいるほうがいい。次会ったときもこの距離が友達でいられる。
次に会うときには、彼女の「大好き」がもっと広がっていてくれるといい。
推しだけじゃなく、他にもたくさんの好きに出会っているといい。
そう願う私は――彼女の笑顔を忘れようとしている。