深夜。ふと、目が覚めた
苦しげな唸り声が聞こえて隣のベッドを見るとサクはひどくうなされているようだった
俺達は昼過ぎにこの町について、飯屋で食事をして、数時間前この宿にきた
ベッドが2つあり、簡素な机が設置してある宿で夜も更けてきた頃お互いどちらからともなく眠りについた
そして今。ベッドから降りて、うなされているサクに近づく
昼間の無表情とはうってかわって苦しそうに歪められた表情は、みてるこっちまで辛くなるようだ。
そして先程から感じる鋭利なスキルの気配。
常に微かに放たれている拒絶の何倍もの強い拒絶のスキルだ
「···嫌だ···もうやだ」
微かに呟かれる寝言も絞り出すような悲痛な声で。寝ているのに涙を溢れさせている
どんな夢を見ているのだろうか
悪夢を見ている時は起こさない方がいいなんて迷信をどこかできいたが、さすがにこんな状態のサクを眺めているだけなのは心が痛んだ
「サク。サク。」
声をかけて軽く体をゆすってやるとサクはばさっと飛び起きた
「はっ···はっ···」
頬や首筋を冷や汗が伝うのと同時に、 見開かれた瞳から涙がこぼれ落ちる
サクは乱れた呼吸を整えている間に平静を取り戻して、いつもの感じに戻ったようだった
しかしそれでも後味の悪そうなしょんぼりと元気のない表情をしている
思わずサクの頭を撫でるとサクも俺に身を任せてくれた
「···寝たくない」
サクの小さな呟きを聞いてサクの隣に座る
星明かりのさす静かな空間に、お互いの気配を感じなからゆっくりと時間が流れていった
朝の光で目を覚ましたことで、自分が寝ていたことに気付く
なんだろう。夢を見ていた気がする。ずっと昔の夢。
だけど夢というもとは曖昧で夢の内容どころか見ていたかどうかすら時間がたてば曖昧になっていく
ただほんの少しだけ沈んだ気持ちが後を引いた
サクもこんな気分だったのだろう
ふと隣を見るとサクも眠っていた
その表情が穏やかなことにほっとしつつ、まだ起こさないように静かにベッドを降りる
そう言えば昨日の朝会った時に居眠りしていたのも悪い夢を見て夜あまり眠れていないからなのかもしれない
自分の愛用している双剣の手入れなどをしながら時間を潰しているとしばらくしてサクが目を覚ましていた
スッキリとした目覚めとまではいかなくとも、ある程度は良く眠れたようだ
「おはよう」
「んん···おはよ」
サクは軽くのびをしながら返事をする
「···なあ。よくうなされてるのか?」
俺がそう問いかけるとサクは一瞬動きを止めて一拍遅れて頷く
「うん。しょっちゅう」
「···そうか」
どこまで聞いていいか分からなくて当たり障りのない返事をしてしまう
「夜中、起こしちゃってごめんね?ジスは眠れた?」
無表情に見えるなかの申し訳なさげな表情
ほんの1日程だがサクと過ごしてわかった
サクは決して感情がない訳ではない
もともとなのか、何か訳があってか、分かりづらいだけでちゃんとある
だからこそサクが何に悩みどんな悪夢を見ているのか聞くに聞けない。聞いていいのか分からない
「···俺はちゃんと眠れたから大丈夫だ」
「そっか。よかった。じゃあ朝ごはん食べてゆっくり町をまわろっか」
サクの提案に頷く
俺達は二人とも支度が整ってから宿を出た
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!