二人は恐らく互いに好意があるのだろう。
紅は自覚していて、藤花ちゃんは多分無自覚だ。
どちらも積極的な性格ではないから、中々進まないままだ。
藤花ちゃんの恋心への自覚は葵ちゃんに任せた。
紅の背中を押すのは俺だ。
想定より早く見終わってしまった俺はどうしようか迷っていた。
バレーの方を見ている紅と合流しようか。それとも違う所を見ていようか。
考えは深まるばかりで答えは出ない。
俺は最終的に紅達の所に行くことにした。
「バレーのエリア…この辺か?」
少し覗いてみると、探している人を見つけた。
「…あれ?」
しかし、紅と藤花ちゃんしかおらず葵ちゃんの姿は見受けられなかった。
もしかしたら、葵ちゃんは空気を読んで二人っきりにしたのだろうか…。だとしたら俺も離れておくのが得策だろう。
そうして離れていると葵ちゃんが二人を見ているのが目に入った。
「葵ちゃーん!二人に気遣ってる感じ?」
「朔君!そんな感じよ!」
葵ちゃんの話曰く、途中で二人だけの世界に入り始めてしまった為、邪魔にならないように一声掛けて離れたらしい。
「ホント紅と藤花ちゃんってお似合いだよな」
「見てるコッチがドキドキするわよね」
「マジでそれな」
そんな会話を交わしつつ、無意識にイチャイチャしているであろう二人を覗く。
「紅君が普段使ってるサポーターってこれで合ってたよね…? 」
「うん、合ってるよ。よく分かったね?」
「えっと、その…バレーしてる紅君格好良くて、いつもみ、見てるから…」
「…!あ、ありがとう…」
互いに照れているのがここからでも分かる。はよ付き合えよ。全力で祝うから。
「…どうするよこれから」
「早めのおやつタイムにする?一階にアイス屋があったはずよ。二人で一つのコーンにして、間接キスさせちゃいましょう」
「良いなそれ。じゃあ2時を過ぎたらその案でいってみるか」
さらなる計画を俺と葵ちゃんは立てていた。二人の恋が実ることを願って。
「紅〜!藤花ちゃ〜ん!こっちこっち!」
「早いね朔」
「すぐ見終わったからな!」
紅と会話を繰り広げつつ、藤花ちゃんに目をやると何だか顔が紅い。先程のイチャイチャ会話が原因だろうか。
よく紅は普通の顔で居られるな、と思いつつ葵ちゃんと考えた作戦に二人を誘導した。
「ちょっと早いけどおやつ食おうぜ!一階にあったアイス屋で!」
「私も、おやつにしたいと思ってるのだけど…紅君と藤花ちゃんはどう?」
「あそこのアイス屋、近くを通った時食べたいって思ったから行きたいな」
「藤花が行くなら僕も」
流石、藤花ちゃんモンペだと感心する。しかし表情的に紅もアイス食べたがっているのが伝わる。
「じゃあ決定!行くぞー!」
そう三人に声を掛けると、アイス屋に向かって歩みを進めた。
見ているこっちがドキドキするような、THE・青春を繰り広げる二人を見ながら俺は微笑んだ。
あの時、母ちゃんのお使いに行って良かったと本気で思う。
葵ちゃんと共に、邪魔が入らぬよう見守っていくと心から誓った。
コメント
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続き待ってました!! 朔くんと葵ちゃんの配慮が素晴らしい、、、 早く紅くんと藤花ちゃんがくっついて欲しい〜!そうなるまでにどれくらい掛かるのか、、、 次回の間接キス編(?)も楽しみです!!