こんな暑い日にはアイスが食べたくなる。
何味にしようか。いつもの味か?期間限定で良いかもしれない。
目の前にいるお似合いな二人はアイスの冷たさを忘れてしまいそうなくらい紅く、熱そうだ。
皆と話しながら歩けば、アイス屋への道のりなんて一瞬に感じれた。
そうして着くとアイス屋に目をやる。
季節が季節だからか人がたくさん並んでいた。大体、5・6組くらい前にいる。
そして俺は事前に葵ちゃんと決めていた言葉を二人に言い放った。
「人多いし、二人で一つにしよーぜ。レギュラーのダブルスを買ってさ」
すると、紅が戸惑っているような照れているような顔をしてこう言った。
「ふ、二人で?一つ?」
「おう、そうだ。紅は藤花ちゃんと一緒のアイスで良いよな?」
「も、勿論!」
明らかに焦った声に少し笑いそうになる。藤花ちゃんの方はプルプルしながら下を向いている。
「私は朔君とペアで食べるから、藤花ちゃんは紅君とペアで食べてね 」
「…うん」
葵ちゃんが改めて言う。藤花ちゃんは顔を上に向け弱々しく答えた。こりゃ相当照れているな。
着々と計画を進めつつ、渡されたメニューを見てみる。いつも通りのチョコ味も良いが夏季限定のトロピカルジュース味も良いかもしれない。
「何味にするんだ?俺はチョコ!」
「私はストロベリーにするわ。二人は何にするの?よく相談してから決めてね!」
俺と葵ちゃんのペアはあっさり決まった。逆に紅と藤花ちゃんは何やらゴニョゴニョと話しているみたいだ。
「抹茶とトロピカルジュースどっちしよう…」
「僕が抹茶頼む?」
「大丈夫だよ。どっちかにするから」
抹茶かトロピカルジュースで迷っているらしい。気持ちはよく分かるので心の中で同意した。
「…決めた!トロピカルジュースにする!」
「OK。僕はバニラにする」
漸く全員何にするか決め終わると俺と紅が代表として列に並び始めた。
「ところで紅よ」
「どうした朔」
俺は思い切って紅に聞いてみることにした。
「いつになったら告白するんだ?」
「こ、告白はまだ早いかなっ!」
目を白黒されながら紅が言う。最早付き合ってないのが不思議なくらいなのにだ。
「ウジウジしてたら他の奴に取られるぞ!」
「えっ?…取ったら消す!」
「消すって何だよ!?こえーよ!」
物騒な発言に思わず戦慄する。紅ならやりかねないのが恐ろしいところだ。
「…まぁ夏休みの終わりくらいには告白してみようとは思ってる」
「その意思、最後まで突き通せよ〜!」
「勿論!」
アイスを買い終わった俺達は二人の元へ向かう。
二人は何やら楽しそうに話し込んでいた。邪魔するのは忍びないがアイスが溶けてしまうので仕方なく話しかける。
「買ってきた!食おうぜ!」
「二人共、おかえり」
藤花ちゃんが最も早く声を掛けてくる。紅も、もう少し反応しても良いのでは無いだろうか?
「……!」
紅らしいな。そう俺は思った。地味にプルプルしているし照れてるんだろう。
「溶けちゃうから早く食べましょう?」
「うん。分かった!」
女子組の声掛けで俺らはアイスを食べ始めた。
目の前に漂う鼻をくすぐる香りに煽られ、チョコアイスを一口齧る。濃厚かつシンプルなチョコレートが口一杯に広がる。
「うっま〜!」
「やっぱり夏はアイスに限るわね!」
「それなー!」
コンビニとかで売っている市販のアイスも当然美味いが、アイス屋のアイスは別格だ。
「トロピカルジュースって飲んだこと無かったから味が想像できなかったけど美味しい…! 」
「いいね。…僕も食べてみたいな」
今度買ってみようかな、と紅が言う。俺と葵ちゃんはこの瞬間を心待ちにしていた。
「じゃあ…食べてみる?」
「えっ?いいの?」
「うん、いいよ。」
藤花ちゃんが自分のスプーンでアイスを掬い、紅の口へ運ぶ。
仕草一つひとつを見逃さない為に俺と葵は食い入るように見つめる。
「ん!美味しいね」
「でしょ!」
ついに紅と藤花ちゃんを間接キスさせることに成功した。ちょっと涙出てきそう…。
「間接キスしてるじゃん!恋愛してるねー」
「ホントそうだよな!ファーストキス貰えるように頑張れよ紅! 」
畳みかけるように二人に間接キスの事と本音を伝えておく。
「……え?あと、あっ!」
「……か、間接キス…」
二人は完全に照れているらしい。顔が紅い。
アイスが溶けてしまっても可笑しく無いくらいの熱を持っていそうだ。
そんな二人をよそに俺と葵ちゃんは計画の成功に心から安堵し、喜んだ。
二人の恋は何だか甘酸っぱい。
ずっと見ていたいような進んでほしいような、焦れた感情を持ってしまう。
紅が告白すると言った今年の夏休み。
俺は思いを馳せた。
コメント
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待ってましたー!!✨ 紅くんと藤花ちゃん、とうとう間接キスを、、、!! 尊い!!尊すぎる!!🙏🪦 よくやった、葵ちゃん、朔くん!! 次回はどんな展開になるのだろうか、、、 楽しみにしてます!投稿お疲れ様です!🍵