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どうやらリアンはおれをルティたちと分断させることが目的だったようだ。単なる草原の中の泉に対し、彼女たちが心を奪われることも想定されていたのだろう。
そしてはぐれたルティたちのいるところで、その戦いが始まろうとしている――。
◇◇
「お前、何なのだ……? アックを返すのだ!」
「ぼくはリアン。自然が大好きなんだ。きみたちもここが気に入ったよね?」
少女としてまだ色香も漂わせていなかったリアン。
「気に入るも何もないのだ!! シーニャ、もっと深い森で暮らしていた。草と泉だけでいい気になるななのだ!!」
「そうだよねぇ。虎人族って森の住人のはずなのに、イスティなんかと一緒にいるんだもん。がっかりしちゃったよ」
「ウガウゥッ! 動くな! なのだ!!」
「ぼくは動かないよ。でも、イスティが来る前に養分を頂いておこうかな? 厄介な赤毛もいることだし」
だが、シーニャたちに見せていたその姿は急に成熟した身体つきの大人へと変化する。
「お、お前……! 何者なのだ!?」
先ほどまでと打って変わったリアンの姿にシーニャが声を張り上げた。シーニャの言葉に、リアンは目立った動きを見せることなく笑みを浮かべる。
「自然を忘れた虎人族はぼくの姿を見ても思い出せない? それとも虎人族のいた森では、ぼくの友だちはいなかったのかな」
「お前に似たヤツ、見たことも無いのだ」
「……それは悲しいね。それじゃあ、まずは赤毛を沈黙させてあげないとね」
リアンは身動き一つ取っていない。
……そう思われていたが、リアンの足元からは黒茶色い根が至る所に伸びまくっていた。
「フンぐぅぅぅぅ……!! 何なんですかぁぁぁ~!! この根はぁぁぁ」
「何をやっているのだ、ドワーフ! 今すぐそこから動くのだ!!」
「はぇっ!? あぁっ――!?」
シーニャの注意が間に合わず、ルティは自分の身に迫る気配に気付くのが遅れてしまう。足元に伸びてきた根に動きを封じられ、さらに全身を縛るようにつるがルティの体に巻きつく。
「はへぇぇぇ……う、動けな……いぃ……」
「――ウガウゥ! 全く、トロくさすぎるのだ!! 自分で何とかして欲しいのだ」
「うぎぎぎ……た~す~け~てぇぇぇ!! シ、シーニャ~!!」
「そこで待っているのだ! 今すぐ――」
油断しすぎていたのか、泉の近くに立っていたルティはまんまと敵の攻撃に捕まってしまった。リアンに対峙していたシーニャがルティをしぶしぶ助けに行こうとするも。
「そうはさせないよ? 自然を忘れた虎人族のきみ、そこで立ち尽くしていてね」
「ウゥッ……!? う、動けないのだ……!」
シーニャの足元は幾重にも重なった根があり、彼女の足に絡みついている。
「まだ分からないのかな? 虎人族の――」
「シーニャは、シーニャなのだ!!」
「そっか、それもイスティのせいだね。虎人族としてじゃなくて、名前のある娘に成り下がってしまったんだ。残念だなぁ……」
リアンは首を左右に振りながらシーニャの動きを封じ続ける。つるに巻き付けたルティを眺めながら、徐々にその姿を変化させようとしていた。
「ふぎいぃぃ……力がぁぁ~何か何かないのぉぉ~!?」
「――アハハッ! ドワーフのくせに随分と余裕があるんだなぁ。それなら、ドワーフの養分をどこまで吸えるのか試さないとね?」
「……ウニャウウ!! オマエ、許さないのだ……! 森を荒らした樹人族!!」
「野生に戻りつつあるのか、自分のことを思い出したかな? あのイスティのことも忘れるまで、怒らせてあげるよ」