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シーニャに挑発するリアンから少し離れた泉の近くでは、ルティが植物のつるに巻きつかれている。いつもの拳の力でもがけばもがくほど、複雑に巻きついて抜け出せない。
自分の力を頼って踏ん張りつつ、ルティは体力が失われていくのに気付く。何度も全身を動かしながら辺りを見回すも、どうすることも出来ずに泣き言を言い出す始末。
「はへえぇぇ……わたし、このまま植物さんになってしまうんですかぁぁ!? まだアック様にし足りないのにいぃぃ」
「……全く、うるさいなの」
「はぇ? この声、フィーサ? ど、どこ~?」
「わらわの存在を忘れて勝手に泣き出すなんて、失礼しちゃうなの!」
「で、でもでもでも……」
どこからともなく突然聞こえてきたフィーサの声。その声に対しルティシアは反論してみせる。
「ハァ……、ドワーフ小娘は力で頼ろうとしすぎなの! 力めば力むほどそのつるは締め付けてくるなの」
「え、え~と、え~と……」
ルティの傍にいたフィーサだったが、剣の姿ということもあって樹人からの攻撃を免れていた。樹人族リアンは強大な力を持つドワーフ――つまり、動きが鈍そうに見えたルティを狙っていた。
だが、すぐ傍に神剣フィーサがいたことには気づいてもいなかったようだ。
「力を抜けばいいだけなの。ほら、さっさとやるなの!」
「よいしょ、よいしょ……あうぅ~抜け出せない~」
「仕方が無いなの。そのままでいるなの」
「へぇぇっ!?」
「……マスターエンチャントを解放。炎属性バーンを――」
巻きついて抜け出せないルティに対し、フィーサは自身に蓄積されていた炎属性を全て解放した。
すると、
「わぁぁ! すごいすごい!! つるが燃えて消えていきますよ」
「熱さも感じていないなんてイスティさまもどうしてこんな小娘を……まぁ、いいなの。体力はどれくらい残っているなの?」
「え~と、ちょっと休めば全力疾走出来ますよ~!」
「……そんな余裕は無いなの! さっさと回復して地面をぶん殴って欲しいなの!!」
「えぇ!? 地面をを~?」
◇◇
フィーサが炎属性を発動したその時、樹人族リアンとシーニャとの戦いが激化しようとしている。その時点ですでにルティの力をかなり吸収していたリアンはその姿をさらに禍々しく変えていた。
「あ~あ……燃やされちゃった。それじゃあ虎人族のシーニャ。きみもぼくの養分になってもらおうかな」
「ガゥゥ!!」
「とうとう人間の言葉も忘れちゃったかな? それでこそ戦い甲斐があるんだけど、四つ足の獣にまで成り下がったら面白くないなあ」
「ウガウゥッ……!」
「ワータイガーに戻ればイスティにとっては痛いものになりそうだね。もう一押しかな」
リアンの根はシーニャの動きを封じ、ルティと同じように力を奪おうとしていた。しかし怒りで野生の勘を取り戻したシーニャの反撃によりこう着状態にあった。
樹人族リアンの攻撃は、つるを伸ばしながら先を尖らせた枝で物理攻撃を繰り出す。枝の先端に当たると相手には麻痺と睡眠効果が生じるはずだった。
しかしシーニャにはリアンの攻撃の全てがまるで効かない。
「……木属性耐性があるのは素直に驚いたなあ。でも、ぼくしか見えていないシーニャ。可哀想だけどあのドワーフのようにがんじがらめにしてあげるよ」
「――ググゥゥ……アック、動け……ない、のだ」
「あれ、まだイスティのことが気になるんだね? きみはもう完全に獣に戻れるというのに。獣に戻ってくれないならもういいや」
先の尖った枝がシーニャの胸に向けられるも、シーニャはまるで動けずにいる。
「ガウゥ……ガゥッ、ウゥニャッ!! ウゥゥッ!」
「抵抗しても無駄だよ。それじゃあ、終わり――」
『――その辺にしとけ』