テラーノベル
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その冷徹なサファイアのような瞳が、私の唇の上で一瞬だけ露骨に留まる。
それから、獲物を追い詰める猫のような、意地悪な細められ方をした。
「口だけは達者だな、駄犬。……それとも、まだ躾が足りなかったか? 泣き叫ぶまで唇を塞いでやってもいいんだぞ」
言い返そうとして、昨夜のキスの感触が、熱が、強引な舌の動きが脳裏にフラッシュバックしてしまう
「だ、駄犬って呼ばないでください! 私はエルサという名前があります!」
彼はそれを見て、鼻で笑うと満足げにティーカップを傾ける。
「ならエルサ、お前もその敬語はやめろ」
「……え?は、はい…えっと…さすがにそれは失礼なのでは…」
「生意気な口を聞くくせにタメ口は失礼ってか?」
「そ、そういうつもりじゃ…!」
「とにかく、暑苦しいのはやめろ」
「わ、わかり、ました」
悔しい。本当に悔しい。
けれど、目の前の男は圧倒的な美貌と、抗いようのない暴力的なまでの権力そのものだった。
私は、震える手でフォークを握ることしかできない。
「おい」
不意に彼が椅子から立ち上がり、音もなく私の背後に回った。
首筋に、ゾクリとするような冷たい感触が走る。
「ひゃっ……! な、何……っ?」
思わず首を竦めると、彼の大きな手が、私のうなじを逃がさないように強引に固定した。
革の手袋越しではない、彼の指先の体温が直接肌に触れて、心臓が跳ね上がる。
目の前の銀食器の表面に、鏡のように私の首元が映った。
彼の手の中にあったのは、大粒のサファイアがあしらわれた、重厚なプラチナのチョーカーだった。
「な……これ、は?」
カチリ、と冷たい金属音がして、首元が締め付けられる。
「刻印だ。お前が誰のものか、外の男たちにも一目でわかるようにな」
埋め込まれたサファイアの深い青は、彼の残酷な瞳の色に酷く似ていた。
重たい。
まるで、目に見えない鎖を繋がれたような、確かな重力。
彼は私の背後にぴったりと身を寄せ、耳元に顔を近づけた。
首筋に当たる熱い吐息と、低く響くシャーロットの声。
「いいか、今日からお前の世界は俺を中心に回る。逃げ出すことも、死ぬことも、俺の許可なくしてはならん。……それが、お前が自分で選んだ『契約』だ」
首に触れる彼の指先は氷のように冷たいのに
そこから伝わる異常なまでの支配欲は熱く、私の理性をじわじわと溶かしていく。
ムカつく。
本当に、偉いんだろうけど、ムカつくぐらい偉そうだし、最悪な男。最低すぎる。
こんな男に
私が身も心も支配されてしまうなんて、絶対にありえない。
そう思いながらも、胸の奥で高鳴る鼓動を抑えきれなかった。
(…これも全部、借金返済のため…お母様に楽をさせてあげるため…!いつか必ずこの男を見返してやるんだから…!)
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