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壱花がその駄菓子のメガネ越しに見ると、大狐の姿が透け、愛らしい小狐がちょこんと立っているのが見えた。
「俺は知らずに、いつものだと思って仕入れたが。
このチョコつきメガネ、どうやら、そのモノの真実の姿が見えるというあやかしのオモチャだったようだ」
そう倫太郎は言う。
ふふふふ、と人間の姿に戻った高尾が俯いて笑う。
「ついに知ってしまったようだね、僕の秘密……。
そう。
僕はね。
結構な年数を経ても、全然、大人になれない狐なんだよ。
だから、いつも大狐に擬態している」
高尾は顔を上げ、高らかに言った。
「そうでないと、美女に相手にされないからねっ」
「……何処までも邪な奴だな」
「ちっちゃい方が女の人たちに受けがいいのに……」
そう倫太郎と壱花が呟いたが。
そういう受けの良さじゃ駄目なのっ、と高尾は主張する。
っていうか、あやかしの美女じゃなくて、人間の美女なら。
どのちみち、人間の姿をした高尾しか見えてないんだから関係ない気もするのだが……と壱花は思っていたが、高尾は言う。
「いつかほんとうに愛する人ができて。
その人が人間だったりしても。
実は僕の正体は、あやかしなんだよ、とバラすとき、大狐の方が格好いいじゃんっ」
「いやそれ、なにも正体じゃないだろっ。
大狐こそ、擬態なんだろうがっ」
と倫太郎と二人、揉めはじめた。
やがて、高尾が悔しそうに叫ぶ。
「おのれっ、秘密を知られてしまったからには仕方ないっ。
こうなったら、僕の秘密を知った者ども、船諸共沈めてくれようっ!」
なんという本末転倒!
「お前がラスボスかっ!」
と倫太郎が叫んだ瞬間、十五分経ったようだった。
「おう、牡蠣がいい感じに焼けてるぞ~」
と笑う斑目の声を聞き、全員が、あーっ、と叫ぶ。
「沈めそこねたーっ」
と高尾が叫び、
「また女湯から飛んでしまったーっ」
と倫太郎と冨樫が叫ぶ。
「もう諦めましょうよ」
早速、冷酒片手に焼き牡蠣を頬張る壱花に倫太郎が言った。
「切り替え早いなっ。
っていうか、お前は女だからいいよなっ」
「なに言ってんですかっ。
私は女湯に入り込んでる変態二人とすやすや寝てる女として見つかるんですよっ。
でも、今、焦っても仕方ないじゃないですか」
まあ、いっぱいやりましょう、と壱花が酒を注ぎ、
「ほらよ」
と斑目が焼き牡蠣を二人に渡す。