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ruruha
ライラ からぴち・シクフォニ♡
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──それから、十年後。
「あらたせんせーーー!!」
二十五歳になった洸くんの誕生日に、空に呼び出されたホテルの高級ラウンジのVIPルーム。
「流石出世したやつは違うな」と思いながら
ソファに座りに着く寸前、どでかい砲弾でも飛んできたのかと思うほどの勢いで、俺の身体が激しく揺さぶられた。
「うわっ……!? 洸くん!?」
「あらたせんせ、会いたかったーー! 全然変わってへんやん! 綺麗なままや!」
勢いよく抱きついてきたのは、ビシッとしたグレーのスーツに身を包んだ洸くん。
身体はしっかりして身長も伸びたけど、180センチある俺よりは10センチほど低いし、屈屈のない笑顔はそのままで安心した。
「え、ほんま歳とってへんやん!なんか高級サプリがぶ飲みでもしてるん?それともメルヘンなお婆さんに魔法でもかけられたん? 」
「ふふっ、ありがとう。弦くんも相変わらずやね?」
弦くんも、裏表のない真っ直ぐな瞳がそのままや。
この様子やと、二人とも反抗期なんてなかったんやろな。少し変わった家族やったから、それなりに少しは心配しててんけど。
身長で言えば、弦くんは俺と洸くんの真ん中といったあたりか。
身長を抜かされなかった安心感が先に来て、45歳にもなって大人気ない感じがして、そんな自分が可笑しかった。
「ほら、もう座ろ。おじいとおばあがもうすぐ来るから」
「うわ、弦、おとうはええけど、流石にくうちゃんに『おばあ』はないで?」
「え、空、そんなに老けてんの?」
「ううん、新先生と一緒! めっちゃ綺麗なまま。やけど、弦、くうちゃんにフラれてから……」
「あほ!! 洸、それ以上言うたら、新先生にお前の秘密バラす!!」
「いや、もう大事な部分は聞こえてしもたから」
「くそ!! 洸め!!」
相変わらず仲のいい兄弟で、本当に微笑ましい。
そうか、でも、弦くんが空を好きになったのは、きっと元宮さんと同じ感性を持っているからなんやろうな。小さい頃からそんな雰囲気はあった。
で、振られた当てつけに「おばあ」なんて呼んで、自分の気持ちを紛らわせようとしているんやろう。切ないけれど、笑いに変えるなんてなんとも彼らしくて可愛らしい。
「……でも、二人ともほんまにカッコよくなったね?」
しみじみと呟くと、二人は少し得意げに胸を張った。
「でしょ? 今日は初高級ラウンジやから、スーツでバシッと決めてきてん!」
「……何着ていってええかわからんし、オシャレ着持ってへんから一緒にスーツ着てくれへん? って、昨日めっちゃ情けない声で電話きて」
「おいお前こら! 今日えらい調子乗ってんな?」
「あらたせんせ、今、弦こんなんやけど、いっつも俺に『洸くぅ~ん、これ、どうかな?』ってなんでもお伺い立ててきて、めっちゃ甘えん坊やねんで?」
「え、めっちゃ意外かも。俺が知ってる十年前は、洸くんのほうがめちゃくちゃ甘えん坊やったのにね?」
俺が懐かしさのあまりクスリと笑って言うと、さっきまで饒舌だった洸くんのお喋りがピタッと止まった。
「っ……、」
洸くんはバッと俺から視線を逸らし、耳の裏まで真っ赤に染めて照れ、黙り込んでしまった。
あ……。もう立派な大人やのに、あの頃と同じようにからかうのは少しまずかったかな。
「ごめんな?」
誤魔化すように、優しく頭を撫でると、
「あらたせんせやから許す」
と口を尖らせて許してくれた。ほんまに、この子はあの頃となんも変わらへんねんから。
10年という歳月は長い。もしかしたら、もう彼らは俺のような「お母さん代わり」の血も繋がっていない男の事なんか忘れて、他人行儀に敬語なんて使ってくるんじゃないか、なんてそんな不安があった。やけど、この数分でそんな考えは完全に吹き飛んだ。
「あ、そうや。洸くん、弦くんは今なんのお仕事してるの?」
「当ててみて。びっくりするで?」
「……え、なんやろ。そのスーツはヒントになる?」
「よく見たら、ヒントになります」
イタズラに笑って弦くんが楽しそうにしてる。それにしても、面影はあるとはいえ、2人ともほんまに大人になった。弦くんは26歳、洸くんは今日で25歳。こんなにかっこいい2人が一緒にこのラウンジまで歩いてきたんやろ? 俺やったら立ち止まって見とれてしまうわ。
「……え? あらたせんせ考えてる?」
「あ、ごめん、2人ともほんまにカッコよくなったなって見惚れてた」
「うわっ、俺、子供ながらに気づいてたけど、完璧に見えて、新先生って天然っていうか……」
「わかる。おとうとおる時は、多分、しっかりせな!!ってなってるから気づかへんかってんけど、俺らとおる時結構天然やったよな?」
「え? そんな覚えはないけど」
職業当てクイズはどこいったん? まぁ2人が楽しいならええけど。
「俺、お風呂入ってる時、ボディタオルで頭洗われた事あるで?」
「俺、小学生の時、給食袋開けたらナフキンじゃなくておとうのトランクス入ってた事あった」
「くうちゃんが忘れた時用にランドセルの前ポケットにお忘れセット入れてくれたから大丈夫やったけど」
と洸くんが大笑いしながら言ってる。
俺、仕事と育児と家事との疲れで頭おかしなってたんやな。きっと。