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光が満ちている。
白でも、黒でもない。
形を持たない何か。
空間は崩れ、床は消え、上下の感覚すら曖昧になる。
その中心に…ダイスケがいる。
膝をついたまま。
息は浅く、視線は揺れている。
🩷…っ…
喉が震える。
音が漏れる。
それだけで、世界が歪む。
壁が裂ける。
空間が波打つ。
制御されていない。
🤍…苦しい?
静かにすぐ近くで声が響く。
ラウールは、崩壊の中でただ一人揺るがず立っている。
ダイスケの前にゆっくりと歩み寄る。
🤍当然だ
淡々と続ける。
🤍その力は“世界そのもの”だからね
ダイスケが顔を上げる。
視界が歪む。
ラウールの姿すらはっきりしない。
🩷…やめて…
掠れた声。
だが、力は止まらない。
音が漏れるたび、現実が壊れる。
ラウールは膝をつく。
ダイスケと目線を合わせる。
🤍止める必要はない
優しく言う。
🤍それが本来の姿だ
手を伸ばす。
触れる寸前で止める。
触れない。
だが、距離は近い。
🤍君は選ばれた存在だ
低く、甘く。
🤍世界を書き換えるための
ダイスケの目が揺れる。
否定したい。
でも、体がついてこない。
🩷…違う…
小さく呟く。
だが言葉に力がない。
ラウールは続ける。
🤍何が違うの?
静かに問いかける。
🤍君が歌えば、世界は変わる
一歩近づく。
🤍苦しみも、不完全さも、全て消せる
ダイスケの呼吸が乱れる。
視界の奥で何かが揺れる。
🩷(消せる…?)
その言葉が深く刺さる。
ラウールの声が落ちる。
🤍君が望めばいい
🤍それだけでいい
世界が軋む。
ダイスケの指先が震える。
🩷(…楽になる)
その考えが一瞬浮かぶ。
その瞬間、音が大きくなる。
暴走する。
空間が裂ける。
塔が崩れ始める。
ラウールの目が細くなる。
🤍そう
低く囁く。
🤍それでいい
ダイスケの目が虚ろになる。
意思が薄れる。
その時―
🖤ダイスケ!!!
強くまっすぐな声。
レン。
遠くから。
でも、はっきりと届く。
ダイスケの目が揺れる。
🩷…れ…ん…
名前が零れる。
ラウールの表情がわずかに変わる。
苛立ちにも似た揺れ。
🤍…邪魔だな
小さく呟く。
だが、声は止まらない。
🖤ダイスケ!!
もう一度。
今度はもっと近く。
🖤戻れ!!
命令じゃない。
願い、叫び。
ダイスケの呼吸が止まる。
🩷(戻る…?)
その言葉が心に引っかかる。
ラウールが即座に言う。
🤍戻る必要はない
さっきよりも強く。
🤍前に進め、それが正しい
ダイスケが頭を押さえる。
二つの声。
二つの“正しさ”。
🩷…わからない…
涙が零れる。
その一滴で、空間が砕ける。
世界が軋む。
ラウールが手を伸ばす。
今度は頬に優しく触れる。
🤍考えないで
低く囁く。
🤍君は“力”だ
その瞬間、ダイスケの目が完全に揺れる。
崩れかける。
意思が消えかける。
その時、目の奥に一つの光景が浮かぶ。
湖。
静かな水面。
差し伸べられた手。
…レン。
幼い日の記憶。
声。
🖤大丈夫だ
あの時の言葉が、今の声と重なる。
🖤戻れ
違う。
でも同じ。
ダイスケの瞳に光が戻る。
🩷…違う
はっきりと。
ラウールの動きが止まる。
🩷俺は…
息を吸う。
苦しい。
でも止めない。
🩷“力”じゃない
その瞬間、音が変わる。
暴走していたそれがわずかに“意味”を持ち始める。
ラウールの目が見開かれる。
🤍…意思…?
ダイスケが顔を上げる。
涙で濡れたまま。
でもまっすぐに。
🩷俺は…
震える声。
でも消えない。
🩷歌う
言い切る。
🩷俺の意思で
その瞬間…爆発。
音が解放される。
光が溢れる。
世界が裂ける。
空間が崩壊する。
塔が歪む。
現実が壊れる。
完全に制御はできていない。
むしろ、さっきより激しい。
だが違う。
そこに“意思”がある。
ラウールが一歩下がる。
初めて、明確に。
🤍…そうか
低く呟く。
その目はもう否定していない。
ダイスケをただ見ている。
ダイスケは立ち上がる。
足は震えている。
でも、倒れない。
声にならない声で歌う。
世界がそれに応える。
歪む。
壊れる。
未完成のまま再構築される。
レンがその光の中に飛び込む。
🖤ダイスケ!!
手を伸ばす。
ダイスケの視線が向く。
まだ揺れている。
でも確かにレンを見ている。
ラウールは動かない。
静かにその様子をただ見ている。
世界が崩れる中で、ダイスケの歌が響き続ける。
最初に異変が起きたのは、音だった。
誰もが同時に違和感を覚える。
耳ではなく、内側に直接触れてくる何か。
子どもが泣き出す。
大人が顔をしかめる。
正しく動くことを忘れている。
遠くの街で、石造りの建物が音もなく崩れ落ちる。
衝撃はない。
ただ形が保てなくなったように。
人々が叫ぶ。
逃げ惑う。
だが、逃げ場がない。
地面が波打つ。
水平が崩れる。
重力すら、一定ではない。
塔の周囲は、すでに現実の形をしていなかった。
空間が裂け、重なり、溶け合っている。
建物が宙に浮き、次の瞬間には消える。
音が遅れて届く。
時間がずれている。
ヒカルが足を止める。
💛…なんだよこれ
息を呑む。
戦場とは思えない。
もう戦いの領域じゃない。
タツヤがその隣で、顔色を失っている。
💜…ダメだ
小さく呟く。
ヒカルが振り向く。
💛何がだ
タツヤの目は、完全に理解してしまっている。
💜これ…
喉が震える。
だが、言葉を止めない。
💜世界の“基盤”が壊れてる
ヒカルの眉が寄る。
💛基盤…?
タツヤは頷く。
💜魔術とかじゃない、もっと下
💜“存在のルール”そのものが…
言葉が詰まる。
言いたくない。
でも言わなければならない。
💜崩れてる
ヒカルが空を見上げる。
歪んだ空、裂けた光。
直感で理解する。
💛あいつのせいか
タツヤが強く首を振る。
💜違う!
即座に否定する。
💜原因ではあるけど…
言葉を選ぶ。
💜ダイスケが壊してるんじゃない
一拍して言う。
💜“抑えてたもの”が外れてる
ヒカルが舌打ちする。
💛どっちにしろ同じだろ
💜違う!!
珍しく強い声。
ヒカルが目を見開く。
タツヤの目は、恐怖と確信で揺れている。
💜このままだと…
呼吸が乱れる。
でも言い切る。
💜世界が壊れる
その言葉が、やけに静かに響く。
遠くで、人の叫び声が聞こえる。
建物が崩れる音。
空が裂ける音。
全部が重なる。
ヒカルが歯を食いしばる。
💛止める方法は
短く問う。
タツヤは答えない。
答えられない。
ただ一つ、分かっていることだけ。
💜…制御するしかない
かすれた声。
💜ダイスケ自身が
ヒカルが視線を塔へ向ける。
歪みの中心。
💛あいつに任せるしかねえってことか
タツヤは小さく頷く。
💜でも…
言葉が続かない。
ヒカルが聞く。
💛でも?
タツヤは唇を噛む。
血が滲む。
それでも言う。
💜間に合わなかったら
沈黙。
その続きを、ヒカルは聞かなくても分かる。
💛全部終わる、か
タツヤは何も言わない。
それが答え。