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マスクの法則

8 - 第7話:ギフト保持者、来訪

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2025年05月11日

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第7話:ギフト保持者、来訪
風が、違う匂いを運んできた。


夕暮れの線路跡。かつて電車が走っていた高架下は、今や落書きと瓦礫の静かな墓場だった。

そこに、ユイナはいた。マスクを1枚、静かに手に取る。

6枚目の回収――だが、その瞬間、背後から足音もなく“空気”が変わった。


「……君か。“視える目”の持ち主」


現れたのは、紅いコートを翻す少年だった。

年はユイナと同じくらい。髪は白銀、目は琥珀色。

だが、顔の上には淡い紅蓮のマスクが浮かぶように装着され、瞳の奥にはまったく“揺らぎ”がなかった。


名前は――アヴィ。

ギフト保持者のひとり。通称《焔面(えんめん)の継承者》。


「君の名前は?」


ユイナは黙って構えた。

彼からは、殺意も敵意も感じない。けれど、それ以上に“絶対的な自信”がある。


アヴィが一歩進むだけで、空気が熱を帯びる。


「まだ君は戦う準備が整っていない。だが、ギフトを得る者ならば……ひとつ、見せておこう」


右手が軽く動いた。


その瞬間、空気が爆ぜた。


無音のまま空中に広がった炎が、爆発を伴わず、螺旋状に地面を穿つ。

コンクリートが一瞬で灼け、地面に巨大な紋様が刻まれていく。


それは“言葉のいらない圧力”だった。

ユイナがマスクを起動しようとするよりも早く、周囲の温度は限界を超える。


(動けば焼かれる。跳ねれば包囲される。――距離が……違いすぎる)


アヴィの足元に炎がまとわりつく。

彼のギフト、《ギフト・イグナイト》は、意志を引火させる力。

攻撃だけでなく、“自らの信念”を燃料にして、限界を突破し続けるタイプ。


アクションは派手ではない。だが、一手一手が重い。

防御不能。予測不能。速すぎるわけでも、遅すぎるわけでもない。

――なのに、反応できない。


ユイナが後退し、壁に背中を当てたその瞬間。


彼は、目の前にいた。


「視る目は、強さじゃない。

強くなる覚悟を、“視えたあと”に持てるかどうかだ」


ユイナの右手にかすかな光が集まりかけた。

だが、それはまだ“ギフト”にはなりきれていない。


アヴィはそれを見て、ふっと口元だけで微笑んだ。


「また会おう、未来のギフト保持者」


そして、炎が風とともに彼の身体を包み、消えた。


ユイナはその場に膝をついた。


あまりに格が違った。

スピードも火力も、技術も、すべてを“持っている者”の動きだった。


だが、心の奥ではひとつだけ――静かに火が灯っていた。


(……勝ちたい)


彼に、いつか、“視えたうえで、届きたい”。

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