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Side 赤
「あー北斗ー! 心配したよ、もう大丈夫?」
更衣室に入ると、少しの間見なかった北斗の姿を発見した。
「うるさいな」
いつもの塩顔で塩対応。でもまあ慣れっこだ。
「充電できたか」
「うん、もう大丈夫」
なぜか樹には笑いかけている。
理由を本人に深掘りしないのも、俺ららしい。
ちょっとした北斗に対しての嫉妬はさておき、「ねえ、慎太郎は?」
いつもなら来ている時間なのに、今日はいない。樹が答える。
「ああ、休むって連絡きた。幻肢痛があるらしい」
「え、…じゃあ今日の練習試合は」
「まあ、交代なしで。北斗来てくれてよかったよ」
今日は、いつもの体育館ではなく練習試合が行われる場所だ。しかも慎太郎がいないとなれば、試合中はずっとこのメンバーで頑張らなくてはいけない。
「まあ俺らならいけるって。ちゃんと勝って、次の大会、いい状態で行こう」
高地が励ました。
みんなでパスをしたり、ストレッチしたり、そうこうしているうちに試合時間が近づいてきた。
ユニフォームに着替えた5人は、いったん集まる。車いすのタイヤとタイヤがちょっと触れるくらいの近距離で、円陣を組む。みんなの顔がよく見えるからだ。
「車いす大丈夫だね? 飲み物飲んだ? 準備できてる?」
こんな感じの確認事項を、毎回キャプテンは言う。そこに、今日はもう一言付け加えた。
「慎太郎の分まで頑張ろうな。じゃあいくぞ」
このあとは、なぜか決まって俺の番。
「We are…」
確か、前に樹が『お前は英語の発音がネイティブだから』って言ってたような気がする。
5人「SixTONES!!!!!!」
いつもは、ここを6人で言う。
健常者みたいに足を踏み出せないから、声の気迫で何とかしようっていう感じらしい。
腕を解くと、みんなでコートへ向かう。この張り詰めた緊張の中に自信と楽しみが入り混じっている時間が、俺にとってはちょっと気持ちいい。
ふとメンバーの表情をうかがうと、もうすっかりプレイヤーの顔になっていた。
俺も気持ちを引き締めた。
「噓だろ、何でだよっ」
控室には、樹の怒声に近い声が響く。
ついさっき試合が終わり、結果も発表された。
それが、惨敗。
相手チームは、以前勝利したことのあるチームだ。負けるだなんて、誰も思っていなかった。なぜなのかもわからない。
みんなして、立ち尽くしていた――というか、車いすの上で座り尽くしていた。ただ樹だけが、声を発している。
「やっぱ慎太郎がいなかったからかな…。俺、あいつに合わせる顔がねぇよ。どうすればいいんだ……」
北斗がそっと近寄り、「…ごめん、俺がもっと動けばよかった。ちょっと慌てちゃって」
「ううん、北斗のせいじゃないから」
「樹のせいでもないよ」
俺が言うと、顔を上げる。
「でも責任はキャプテンにあるだろ…」
首を振るが、聞く耳を持たない。
「ちょっとトイレ行ってくる」と出ていってしまった。
「俺なんにも出来なかった…」
ぽつんと高地が言う。
「もうやめよ、みんな自分を責めすぎだよ。誰も悪くないんだからさ」
「そうだよ、大我の言う通り。練習試合だから、また次頑張ろう。慎太郎と一緒にな」
高地と北斗はうなずく。
「でも……樹、大ダメージだよな、あの感じ」
北斗がドアのほうを見やる。
「うん…」
しばらくすると、扉が開いて樹が戻ってきた。その表情は沈んでいる。
「……さっきさ、スタッフさんに声掛けられて。『最近SixTONES調子良かったのに、今日はあれだったね』って。大会は楽しみにしてるよって言われた」
重い沈黙が訪れる。
「気にすんな。もう過ぎたことなんだから。みんなで次の大会の予選、頑張ろう。目標はそこだよ」
北斗の声で樹はやっと頬を緩め、うなずいた。
「俺、ジェシーだよ」
インターホンに呼びかけると、はーいと返事があった。
青月サン🎲🤪💙@🐤🫶
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30
雪村 麻耶 @ ペ ア 画 中
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「よ、慎太郎。元気か?」
試合終わりに、車で慎太郎の家に様子を見に来た。
「うん。たぶん治った」
笑って言うので、安心した。
「入っていい?」
「どーぞ」
よく遊びに来るので、慣れている。
「足、どうだった?」
「あー、朝けっこう痛くて。ちょっと行けないなって思ったけど、昼ぐらいには治ったよ」
「そっか、良かったな」
「あ、今日練習試合だったんでしょ? どうだった?」
そう問われ、言葉に詰まる。慎太郎は察したようで、「……ダメ、だった…?」
「…負けた。俺らもなんでかわかんない。いつも通りにやったと思うんだけど」
「相手が悪かったんじゃない?」
「いや、前勝ったところだから」
「ああ…」
「まあ、次の大会の予選で、一緒に頑張ろうな」
「うん」
と、「――うっ」
突然、慎太郎が顔をしかめた。
「足痛い?」
うなずいたのを見て、ソファーに寝かせる。
「痛いね。俺がいるから、大丈夫だよ」
薬を飲み、しばらくするとうめき声は少なくなった。
「ちょっと治まった。ジェシー、俺は大丈夫だから。もう遅いし」
「ほんとに?」
うん、と答えた。
「じゃあ帰るわ。大会、頑張ろうな」
「もちろん」
手を振り、家を出た。
続く