コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
異種族たちはおれを主と認め、従いの意思を見せる。
「アック・イスティさまを国主として、我らはあらゆることに従います」
その言葉の後、再建の話に入ることになった。
先に話が進んだのは残された廃墟についてだ。廃墟については、手酷く破壊されたものを除いて修復する方向でまとまった。森林ゲートからまともに出たことが無かった獣人たちから話を聞くと、彼らの中には腕に自信のある職人がいるらしい。
それならば陣頭を取れる者を残し、思うようにやらせてみることにした。イデアベルクは確かにおれの故郷であり、自分の国で間違いはない。しかしおれは長く離れていた身だ。国主としての理想を描くにはまだ早いと判断する。
そんな思いもあり、当面は彼らに任せることを決めた。
◇◇
「では、アックさま。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ミルシェもな」
ミルシェは意見やら何やらをまとめる能力が高い。一時的とはいえ、王女として生きてきた経験がある。彼女には軍師的な役割を与えることにした。
ルティにもここに残ってもらうのだが、
「あぅぅ~うぎぎぎぎ~」
「そう拗ねるなよ、ルティ」
「で、ですけど~!」
ミルシェと違い、何かしらの不満があるようでずっと拗ねている。
「……おれとしてはルティが彼らを育ててくれると信じているんだぞ? だから頼む!」
「ほっ!? そ、それは後々で大いなるご褒美をを~?」
「ま、まぁな」
「ふおおおおおおぉ」
――といった感じで、今回はミルシェとルティに留守を任せることに。フィーサは眠りに入ってしまったと聞いている。どうやらエンチャントダークの衝撃が強かったらしく、疲労してしまったのが原因らしい。
そして今は、
「ウニャ~楽しみなのだ~」
「おれもだぞ、シーニャ」
「フニャウ!」
弾む勢いで前を歩くシーニャとともに、おれはとある場所に向かっている。
貴族でも限られた人間しか立ち入れない場所の存在で、おれの父親や一部の貴族が隠していた辺境エリアへの道のことだ。道の存在をエルフらから聞き、彼女たちに先導されて向かっている。
「我らはそこから来た。人間の国に興味があったからな。扱いに関わらずだがな……」
「――つまり、里のような所が存在しているんだな?」
「我らエルフは本来であれば他種族に関わらぬ。故に、戻れる保証も無い」
サンフィアを筆頭に彼らはおれを認めた時点から、里に戻ることを決めていたようだ。戻るといっても簡単なことではないらしく、里に行くには認められた者がいなければ道は開かないのだとか。
「ここだ。ここから先は我では開けぬ」
そうこうしているうちに、閉ざされた構造物の前に着いた。
「どうやるんだ?」
「イスティだ。イスティが手をかざして開く」
「おれが?」
「当然だろう」
サンフィアたちエルフが一斉におれを見ている。目の前には閉ざされたゲート。魔物や魔導兵も寄せ付け無かったということは、強い結界魔法がかかっていることを理解する。
「おれに何が出来るんだ? 手をかざすだけで開くほど甘くなさそうだぞ」
「このゲートには魔力による封印がなされている。その魔力は、イデアベルクの者にしか解けないものだ」
ああ、そうか。
ここから先にあるエリアからかつてのエルフたちを連れて来たとすれば、隠したい事実があるということになる。
「ウニャ? アックだけが開けられるのだ?」
「……そうみたいだ」
「フンフン?」
「――やってみるか。シーニャは少し離れてるんだぞ」
「ウニャ!」
サンフィアたちとシーニャが見守る中、おれはゲートに手をかざす。
一瞬ではあるが、手に痺れのような電流が走った。すると、開かずのゲートが開き始めた。
「この先に里があるのか?」
「……エルフの森域だ。だが人間であるイスティは襲われる可能性がある。だが安心しろ! 我が守ってやる」
「襲われても別に問題は無いが……」
「強さでは確かにそうだが、そうではない」
貴族がしでかした行いのことだろうか?
そうだとすれば、単純に強いだけでは防げないことになる。
「アックはシーニャが守るのだ!」