——あれから13年が経ち2026年5月。顔なじみの優秀な協力者たちが集結し、警視総監直属の非公認組織のメンバーとして活動していた。彼らの仕事は、国家機密事案、テロ、大規模な情報戦といった事案を、密かに、図太く解決していくことだ。月原悠斗は、この組織の中で13年前の事件の真相を追い、今回の事件解決を通じて真犯人に繋がる手がかりを掴むことを目指していた。—— 2026年5月20日深夜2時。奴らが再び人を殺害した。手口は13年前と酷似していた。
「2026年5月21日06時45分。渋谷区の住宅で殺人事件発生。人が血を流して家の中で倒れているという通報。公安部特別情報分析班、出動せよ。」そう、アナウンスがはいり、現場捜査官達やほかのメンバーも一気に動き出した。現場に到着した月原現場捜査官(主任)は、メンバー6人と共に壮絶な光景に息を飲んだ。目の前に広がるのは、13年前の事件と全く同じ景色。月原は、被害者である漆盪(うるしばら)夫婦と子供たちの情報を事前に把握していた。
月原は、すぐに我に返り、事件の詳細を聞くため指示を出した。「河口、内宇利は、漆盪夫婦の死因と死亡推定時刻を聞き出せ。遺体に不明な点があれば解剖に回せ。齋藤、五十嵐は防カメと近所の人に事情聴取、赤山、綾口は、電子機器を全て回収し分析班に回せ。俺は、子供たちのメンタルケアをしながら事情聴取をする。各自指示されたことを最優先にしてから、気になることを調べろ」メンバーは「了解」と言い、それぞれ素早く動き出した。
月原は子供たちの側へ行き、優しく語り掛けた。「怖かったね。でも、もう大丈夫だ。怖い人はもう来ないから、おじさんにゆっくり話して欲しいんだ。昨日の夜、何があったのかな?泣いてもいいんだ。おじさんにも、君たちと同じくらいの年に怖い思いをして一人ぼっちになったんだ。でも、君たちの傷と僕の傷の大きさは全然違う。話してくれるかな?」
優しく語り掛けた月原を見た双子の兄妹は、怯えながら弱々しく頷いた。
月原は質問を続けた。「パパとママは最後に、君たちに何か言ったり渡したりしたかな?おじさんね、小さい頃パパとママにカチッとするものを渡されたんだ。これなんだけど、見覚えのあるかな?」
双子の弟の方がすすり泣きながら悠斗の方を見あげて顔を見た。
悠斗が「何か思い出したかな?」と言うと、弟は頷き、話し出した。「…パパが言ってた。『これは宝物だ。誰にも見せちゃだめだよ』って。ママとパパが知らないおじさんと怒鳴り合っている間に、黒いカチッとするやつを、ここ、ソファの下の、破れたところに押し込んだんだ」
「知らない、おじさん?」と月原が質問した。双子の姉の方が「うん、目の方から口まで痣があったよ。私たち、パパとママに言われたとおりに知らないおじさんに見つからないように自分たちの部屋のクローゼットで隠れてたけど、気になって隙間を作ったんだ」と証言した。
その証言の直後、鑑識から「月原主任!ソファの下の破れ目から、USBメモリーがありました!鑑識で調べますか?」と報告が入った。
悠斗は双子の証言と報告を繋げ、確信した。このUSBこそが、真の敵が狙うものであり、13年前の事件の鍵だ。
「いや、こっちで調べるから、USBメモリーを俺に渡してくれ。」
鑑識は戸惑いながらも、月原にUSBメモリーを渡した。月原は受け取った黒い「カチッとした」USBメモリを掴み、その冷たさに両親の死の夜の記憶がフラッシュバックする。彼はすぐにインカムを操作し、分析班である水科に解析と分析を依頼した。
13年前、両親が自分に託したあの夜の記憶が鮮明に蘇る。今、奴らが手にしたいものがここにある。奴らの正体は、依然として黒い影しか浮かばない。早く奴らを捕まえなければ、俺や双子の未来は危うい。そう考えるだけで背筋が凍る。
月原はインカムのスイッチを入れ、水科に冷静なトーンで指示を出した。「水科。至急、13年前の事件のUSBメモリーと、今から渡す今回のUSBメモリーを並行解析しろ。ただし、絶対に中身を開く前に、互いのデータ構造と、外部への通信履歴の有無だけを確認しろ。トラップの可能性がある」
「了解、主任。すぐやります」水科の緊張した声が返る。ただ、ここでやらない訳には行かなかった。メンバーたちは、月原悠斗の過去を知っており、影のテロ組織である黒幕を早く捕まえたいからだ。その直後、近隣への聞き込みと防犯カメラのチェックを担当していた齋藤から、インカムに緊迫した声が飛び込んできた。
「月原主任!西側の路地で、不審車両を確認しました!車種は黒のセダン、ナンバーは特定できませんが、運転手は…双子の証言にあった**『痣(あざ)の男』に酷似**しています。こちらを窺っています!」
月原は双子の手を取り、強く言った。「もう一度隠れよう。僕が持っている**『カチッとするもの』**が、君たちを守る盾になるかもしれない」
彼は迅速にメンバーに指示を飛ばす。「全員聞け!第一優先事項を**『双子の安全確保と現場からの緊急離脱』**に変更する! 河口、内宇利は、解剖と事情聴取を一旦ストップし、双子を連れて緊急隠匿ルートへ!齋藤、五十嵐は陽動班として、不審車両の追跡を装い、注意を引け!赤山、綾口は、現場の全機器の電源を落とし、すべての記録を抹消してから合流だ!」
「了解!」メンバーは迷いなく動き出した。
月原は、双子を連れて玄関を飛び出す直前、インカムのマイクを口元に寄せ、水科に極秘の指示を付け加えた。「水科…俺が持っているもう一つの『カチッとするもの』がある。13年前に両親から託された、俺自身のUSBだ。誰も見るな。それを今回のUSBと一緒に、二つを鍵として、一つのデータを復元させろ。共通の暗号鍵が見つかれば、真の敵に繋がる国家機密のファイルが開く。これは俺の贖罪だ。最優先でやれ」
月原は、自分の命運と双子の未来を託し、双子と共に闇の中へと走り出した。彼らが飛び出した直後、黒いセダンが猛スピードで住宅の前に停車した。痣の男が車から降り、冷酷な目で屋内を見据える。
奴らの狙いは、やはりUSBか、それとも目撃者の双子か。二つのUSBが結びつける真の闇は何なのか。
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