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何時ものように、廊下には注射器が転がっていた。最初こそは彼女を止めていたが、何回彼女を止めても、翌日には腕に注射器を刺していた。私は止める事を諦め、使用済みの注射器をゴミ箱に捨てるのが日常になっていた。私は彼女が堕落していくのをひたすら眺める事しかできなかった。庭の椿は枯れていた。
彼女は恋文を残してあの世に堕ちた。去年の秋に薬物で廃人となった彼女は、今年の春に亡くなった。彼女が好きな花は椿だった。人生の最後に好きだった花を見て微笑む彼女の顔を思い出すと胸が苦しく、同時に救われたような気がしていた。私は今でも彼女を救えなかった事、救うのを諦めた事を後悔している。庭の椿は生き生きと咲いていた。