テラーノベル
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ツアー最終日。
アンコールを終えて、楽屋に戻ってきた瞬間。
俺は、足がふらつくほどの疲れを感じていた。
けれど、それ以上に胸を占めていたのは、
さっきステージでふみくんと目が合ったとき、
あの一瞬だった。
あの目。
ファンに見せる笑顔じゃない。
グループのリーダーとしてでもない。
ただ、“ふみくん”で俺にだけ向けられた、
優しいまなざし。
「……もう、大丈夫?」
タオル片手に、FUMINORIが声をかけてくる。
その声に、俺はうまく言葉が返せなかった。
代わりに、
ほんの少しだけタオルの端をつかむ。
「……今日は、泊まってもいい?」
ぽつりと落とされた言葉。
誰にも聞かれないように、小さな声で。
ホテルの部屋に入った瞬間、背中から抱きしめられた。
「ステージじゃ触れられないから。
……ずっと我慢してた。」
耳元で囁かれる声に、心臓が跳ねた。
熱が滲むようなキス。
そっと指でなぞる鎖骨。
重ねた唇の奥から、名前を呼ぶ声が漏れる。
「……ふみや、愛してるよ。」
明日にはまた、何事もなかったように
“アイドル”でいなきゃいけない。
でも今だけは、
ステージの光なんて届かない、
この部屋の中だけは――
誰にも邪魔されず、ふたりきりのままで。
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