テラーノベル
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(ベルナール様の話してしまう? でももしそれであの魔術師に勘付かれたら、今持っている優位性が失われてしまう)
少しでも選択肢を誤れば、ラフェドがさらに傷つくことになり、そして自分の死期が早まることに直結する。
(どちらにしても私自身も冷静に状況を理解して、行動指針を見直さなきゃダメだわ)
「シルヴィア?」
「……ベルナール様。今はまだ自分も混乱していて……もう少し時間をくれませんか?」
「うん。もちろん」
今結論を出すのが最善だとは思えなかった。冷静じゃないし、混乱もしている。
敵はわかった。でも誰が味方になってくれるか。信じて良いのか不安になる。それは人でも人外でも同じ。
(今はまだ……この秘密を言えない。ベルナール様が心配してくれているのに……申し訳ない)
「シルヴィア、君は僕に迷惑や面倒ごとを持ち込んでも良いんだ。家族ってそういうものだろう? 君が困ったときに僕が何も出来ないでいるのは悲しい」
いつになく流暢な言葉で私に語りかける。
人に近い姿になったベルナール様は私のことをギュッと抱きしめる。手や身体、顔も人に近い。鱗は残っているけれど。長い髪が頬に掛かって擽ったい。
「僕も難しいことは君に頼っているし、家族には笑っていてほしい。だから僕を巻き込んでよ」
その言い方は卑怯だ。でもベルナール様の心遣いに救われもした。
家族。今世では縁が薄かったものだ。だからこそ血の繋がりはなくとも家族という関係に胸が温かくなる。
「ええ、もう少し気持ちが落ち着いて、方向性が見えたら存分に頼らせてください」
「うん。僕も君に話したいことがあったから、僕のほうでも気持ちを整理しておく」
お互いに笑って気まずい雰囲気が消え去った。それと同時にハナちゃんやクロちゃん、そしてあーちゃんが書庫に突貫してきたので、一気に賑やかに。
「めええええ」
「あーちゃん?」
特にあーちゃんは私の腕の中にすっぽりと収まって、ぐりぐりと頭を擦りつけてくる。まるで匂いを上書きするような行動に、なんだかホッコリした。
***
ベルナール様の領域は、四季の移り変わりがあまりなかったらしい。しかし季節が変わると時の流れを感じる云々を語ったところ、庭の外が一瞬で大雪のなった。
(極端すぎる! あ、でもこの分ならカマクラとか作れるかも?)
庭は箱庭システムが使えるらしいので、課金すると色んなものが植えられて時間になると収穫できる。ベルナール様やラフェド──アルベルト様は「なんで!?」と不思議がっていたが、このシステムには神様の力が加わっているっぽいらしい。
(謎と課題だけが増えた気がする……)
何度目になるかわからないため息を吐きつつ、ステータス画面を覗くと「箱庭レベル2」とある。今育てている植物は「キャベツの木」と「じゃがいもの木」と「タマネギの木」それから「豚になる木」だ。
(うん。いつみてのクリスマスツリーのような木々に豚がぶら下がっているみたいなすごい絵面だわ)
バロメッツという魔物とはまた違う。見た目てきにすごい物なのだが、ハナちゃん、クロちゃん、あーちゃんもこの木に関してはノーリアクション。
「キャベツ緑好きシャキシャキ、タマネギのスープも美味しい」
「じゃがいものほふほふかアゲアゲ」
(すっかりグルメのなっているわね。それはそれで微笑ましい)
色の付いた食事は味わいが深くて、美味しいのだと学習したようだ。
「めええ」
「どうしました、あーちゃん?」
振り返るとあーちゃんことアルベルト様は、蜂蜜まみれでドヤ顔をしていた。傍にあるオレンジ色の蜂蜜の瓶には大量の高級蜂蜜が入っている。しかも色もついているので、おそらくこの空間ないでとってきたのだろう。
いやそれよりも蜂蜜とフローラルな香りもクラクラしそうだ。
「めえええええ!」
「どふっ!?」
あーちゃんは蜂蜜塗れのまま、私に勢いをつけて抱きついてきた。傍から見たら突貫されたと思うだろう。エプロンは蜂蜜まみれで押し倒された私ももれなく蜂蜜まみれだ。
(嫌がらせ!?)
「めえめえ」
いつも以上に甘えている感じがするし、頬を舐めてくる。これはもしかして種族的な意味合いがあるのではないだろうか。そう考えを巡らせるが他種族の修正など全く不明なので、どう反応すべきか悩む。
「(怒るべきなのか。蜂蜜を取ってきて偉いと言うべきか。そういえば前世でにたようなことがあったような……)んん!?」
考えている間にあーちゃんが唇に触れた瞬間、人の、アルベルト様の姿に変わり、そのままキスを続ける。
「──っ、アルベルト様!」
「アルだ、これからはそう呼んでくれ。ラフェ……いやそちらはもっと距離を詰めてからか?」
モフモフではなくなったので、私を押し倒しているような感じのアルベルト様をジッと見つめた。
「この惨劇の意図は?」
「さ!? 違う。……夜月羊は甘い香りを纏って求愛するのが通例なんだ」
「きゅう……あい」
「ああ? わからなかったか」
「一ミリも」
「……そうか。……そういえばお前は人外について知らないことが多かったな」
(めっちゃションボリしている!?)
#異世界恋愛
#ファンタジー
コメント
1件
うわっ、第21話めっちゃ良かった……🥀💘 ベルナール様の「家族ってそういうものだ」が沁みたし、シルヴィアが冷静さを保ちつつも揺れてる感じがリアルでしんどい。でも最後のあーちゃん(アルベルト様)の蜂蜜まみれからの急接近、ギャップやばい! 「夜月羊の求愛」って説明に「一ミリも」返すシルヴィアのドライさもツボった🖤 甘くて不器用で、でもちゃんと「アル」って呼ばせるところに沼った。続き気になる〜🤍