テラーノベル
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「僕はね、リリー。……初めて出会ったときから、キミに惹かれていたんだよ」
視線を逸らさない。
「年が離れすぎているからと、諦めようとしたこともあった。けどね、キミをここへ連れて来た時にはもう……伴侶にするなら、リリーしかいないと心に決めていたんだ」
「……え? でも……私とランディが初めて出会ったのって……」
「船の上で、だったから……リリーはまだ六つの子どもだったね」
懐かしむような声音。だが、その視線はまったく笑っていなかった。
「何度も離れるよう注意したのに、キミは無邪気に笑いながら拒否をして、僕にリンゴの実をくれたんだ。――覚えてる?」
覚えていないはずがない。そう確信しながらも、リリアンナの耳元へ低く言葉を落とせば、彼女の身体がキュッと強張ったのが分かった。
「僕が怖いかい? リリー。――でもね、実際そう思ったのだから仕方がない」
動けずにいるリリアンナの顔を間近で見降ろすと、その頬へそっと触れる。
「キミは、僕にとって抗いがたい血を持ってるからね」
リリアンナには、ランディリックが何を言っているのか半分も理解できていないだろう。だってこれは、ライオール家に時折現れる、特異体質を持った者の話なんだから――。芳しい血の匂いを漂わせる異性に、異常に執着してしまうだなんて、きっと〝普通の人〟には理解出来ない。
だがそんなの、今はどうだっていい。
大切なのは、自分がリリアンナをどうしたいかであって、それ以上でも以下でもないのだ。
「リリーがどう思おうと関係ない。恨むなら、僕の前で無防備に怪我した手を差し出した、幼いころの自分の軽率さにして? 僕はね、リリアンナ。せっかく手に入れたキミを――手放すつもりはない」
静かに言い切ると、リリアンナの喉が小さく鳴った。
「……ねぇ、ランディ、いきなりどうしちゃったの……? なんだか……怖い」
その先の言葉が、続かなかった。
「それに……急にそんなこといわれても私……ランディのこと、どう思ってるか、自分でもよく分からないの」
絞り出すような声だった。
「ずっと……家族みたいに思ってきたから……」
それ以上が続かない。
ランディリックはわずかに目を細めた。
「……じゃあ聞く」
さらに距離を詰める。
「リリーは、僕から離れたいの? 家族って言うなら、僕がキミの夫になっても変わらない関係だと思わない? いや、むしろ……今のままの曖昧な関係よりよっぽどしっかりと〝家族〟って形に嵌まると思うんだけどな? どう?」
逃げ場のない問いだった。
「……それは……その通りだし……私だってランディやこのお城のみんなと離れたいわけじゃ……ない……」
かすれる声。
「でも……国のことを思えば……私や貴方の気持ちは……殺すべきだと……」
その瞬間、空気が変わる。
「……は?」
低く、押し殺した声。
「今、なんて言ったの?」
詰め寄る。
「両親を亡くして、虐げられて――それでも我慢してきたリリーが、まだ我慢を選ぶっていうのか? そんなの、許せるわけがないだろう!」
リリアンナの肩がびくりと揺れた。
「さっきも言ったはずだ。僕は、キミを離すつもりはない。どんな理由があれ、僕から離れるなんてこと、許さない」
断定する。
逃げ道を潰すように。
そして、ふと口元だけで笑った。
「……ねえ、リリー」
囁くように近づく。
「知ってるかい? マーロケリー国では、花嫁に純潔を求めるんだ」
リリアンナの瞳が揺れる。
「もしそれがなければ――こんな話、最初から成立しないってことだね」
壁際まで追い詰められたリリアンナの顎に、ランディリックの指先が触れた。
リリアンナが、まるで追い詰められた小動物みたいにビクリと身体を震わせて、逃げ場を探すようにランディリックを見上げた。
コメント
1件
わー、ヤンデレだ!(でも好き)
#独占欲
#ワンナイトラブ