テラーノベル
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「……っ、ランディ、やだ! ……離して……!」
弱々しく胸を押し返そうとするリリアンナの両手首を、ランディリックは片手で容易く取り押さえた。
そのまま彼女の頭上、冷たい壁へと縫い付ける。
「いや? 何がいやなんだい、リリー。僕から離れたくないと言ったのは、キミの方だろう?」
耳元で囁かれる低く、熱を帯びた声。
いつもリリアンナを守ってくれていたはずの、優しくて大きな掌。
それが今は、自分を捕らえて離さない強固な檻にしか感じられない。
窓の外では、ニンルシーラ特有の乾いた夜風が、窓を叩いて虚しく吹き抜けている。
あんなに冷たく澄んでいたはずの空気は、この密室内には微塵も存在しない。
代わりに満ちているのは、ランディリックが発する圧倒的な熱量と、狂おしいほどに濃密な執着の匂い。
外界から隔絶されたこの空間だけが、まるで沸き立つ熱に浮かされているかのようだった。
「アレクト殿下やマーロケリー国が望むのは、清らかな〝乙女〟としてのキミだ。だが、もしその蕾が、今夜この場所で、僕の手によって開かされてしまったら……?」
ランディリックの指先が、ネグリジェの合わせ目を割り、リリアンナの白い首筋から鎖骨へと滑り降りる。
その感触にゾクリと身体を震わせたリリアンナが、短く悲鳴を上げようとした瞬間、その唇はランディリックの激しい口づけによって塞がれていた。
「ん……ん……っ!」
庇護者としての情愛など微塵も感じさせない、一方的で、貪り食うような〝雄〟としての舌の侵入。
無理矢理与えられる初めての感覚にリリアンナの脳内は真っ白に染まり、膝の力が抜けていく――。
崩れ落ちそうになる彼女の腰を、ランディリックは強引に引き寄せ、逃げ場を奪うように密着させた。
薄い布地を通して伝わる、ランディリックの硬く熱い肢体。
何度も抱き上げられ、甘えてきたはずのその胸板が、今は自分を押し潰さんとする岩壁のように感じられた。
(――嫌だ。怖い)
心はそう叫び、拒絶の声を上げているはずなのに。
ランディリックの大きな手が肌に触れ、その熱が伝わるたび、リリアンナの体は裏腹な反応を返してしまう。
初めて知る異性の熱気に、氷が溶かされるように芯から痺れ、抗う力が奪われていく。
自分を裏切っていくような身体の感覚に、リリアンナは羞恥と絶望で身を震わせるしかなかった。
「リリー、やはりキミは唾液ですらたまらなく甘いんだね……。そんなキミを、マーロケリーの王子になど渡せるわけがないじゃないか」
唇を離したランディリックの瞳は、月明かりを受けて妖しく濡れたアメジストのように輝き、獲物を追い詰めた狼のような光を宿していた。
リリアンナの瞳から、一筋の涙が零れ落ちる。
それを指先で掬い取り、口づけるようにして舐めとると、ランディリックがリリアンナを熱のこもった目で見下ろす。
「泣いても無駄だよ、リリー。……僕は今夜、キミを僕の妻にする。たとえ明日以降、どれほどキミから憎まれようとも……他の男に奪われるくらいなら、その方が何億倍もマシだ」
#独占欲
#ワンナイトラブ
ランディリックはリリアンナを軽々と横抱きにすると、彼女が逃げ場を求めていたはずのベッドへと、ゆっくりと押し倒した。
非力なリリアンナに、逃げ場など最初からなかった。
――だが。
ランディリックを見上げるマラカイトグリーンの瞳だけは、まだ完全には折れていなかった。
コメント
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え!? ちょ、ランディリック!?