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琥珀
51
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#からぴちBL
りと。@就寝中
2,226
第3話「なんで、こんなに」
――翌朝。
ya「……最悪」
目が覚めて、最初に思い出したのは昨日のことだった。
『俺、絶対こいつには逆らえない』
よりによって。
壁越しに聞かれていた。
ya「……忘れろ、俺」
布団に顔を埋める。
けれど。
ピンポーン。
ya「……まさか」
恐る恐る玄関へ向かう。
ドアを開けると。
no「おはようございます、ゆあんくん」
ya「…………」
no「どうしました?」
ya「……なんで普通なんだよ」
no「何がですか?」
ya「昨日のこと」
no「ああ」
なおきりさんが、少しだけ笑う。
no「忘れてませんよ」
ya「……っ」
no「ちゃんと覚えています」
ya「……性格悪い」
no「昨日も言われましたね」
ya「誰のせいだよ……」
no「僕ですか?」
ya「……そう」
no「では、責任を取って」
ya「え?」
no「朝ごはん、一緒に食べませんか?」
ya「……は?」
no「昨日のお返しです」
ya「……別に、いいけど」
no「本当ですか?」
ya「……何その顔」
no「嬉しいなと思って」
ya「……」
まただ。
こういうところ。
さらっと言うから、こっちだけ意識してしまう。
ya「……じゃあ、早く行くよ」
no「はい」
――近くのカフェ。
向かい合わせに座る。
昨日までなら、ただの共演者だった。
でも今は。
お互いの秘密を知っている。
それだけで、妙に距離が近く感じる。
no「ゆあんくん」
ya「ん?」
no「昨日、帰ってから眠れました?」
ya「……ちょっとだけ」
no「僕もです」
ya「え?」
no「なんだか、色々考えてしまって」
ya「……何を?」
no「秘密を共有するって、こんなに緊張するんだなって」
ya「……」
no「でも」
なおきりさんが、優しく笑う。
no「ゆあんくんなら、話してもいいと思いました」
ya「……なんで?」
no「なんとなくです」
ya「それ、一番分かんない」
no「ふふ」
ya「……俺も」
no「はい?」
ya「……なおきりさんだから、言えたんだと思う」
一瞬。
なおきりさんが黙る。
no「……そうですか」
ya「うん」
no「ありがとうございます」
ya「……何でお礼?」
no「嬉しかったので」
また。
その言葉に。
胸が変に跳ねる。
――撮影スタジオ。
監督「今日は昨日の続きです。二人の距離がさらに近づいていく感じでお願いします」
ya「……」
no「……」
昨日と同じように、二人で立つ。
けれど今日は。
昨日よりも、意識してしまう。
監督「じゃあ、お願いします!」
――カット。
ya「……」
no「……」
監督「いいですね!今の感じです。もう少しだけ、目線を長く合わせてみましょう」
ya「……目線?」
監督「はい。お互いを意識しているのが伝わるように」
no「分かりました」
再び向き合う。
目が合う。
ya「……」
no「……」
数秒。
ただ見つめているだけなのに。
心臓がうるさい。
ya「……」
no「……顔、赤いですよ」
ya「またそれ?」
no「今日は暑いんですか?」
ya「……うるさい」
no「ふふ」
監督「カット!いいですね!」
スタッフ「二人とも、かなり息合ってきましたね」
ya「……そうですか?」
スタッフ「はい。昨日より自然です」
no「そうかもしれませんね」
ya「……」
なんだろう。
その言い方。
まるで。
本当に、俺たちが近づいているみたいで。
――休憩。
ya「……」
ソファに座っていると。
隣に、なおきりさんが座る。
昨日と同じ。
ya「……また隣?」
no「嫌でした?」
ya「……嫌じゃない」
no「よかったです」
ya「……」
少し沈黙する。
ya「ねえ」
no「はい?」
ya「昨日から思ってたんだけど」
no「なんでしょう?」
ya「俺たちって……」
言葉が止まる。
何を聞きたいのか、自分でも分からない。
ただ。
この人との関係が、昨日までとは違ってしまった気がして。
ya「……いや、何でもない」
no「そうですか?」
ya「うん」
no「じゃあ、僕から聞いてもいいですか?」
ya「何?」
no「ゆあんくんは、僕のことどう思っています?」
ya「…………」
思わず、なおきりさんを見る。
no「答えにくければ、いいですよ」
ya「……ずるい」
no「え?」
ya「そういう質問」
no「すみません」
ya「……でも」
一度、息を吐く。
ya「……嫌いじゃない」
no「……」
ya「むしろ……」
言えない。
『好き』なんて。
まだ。
ya「……話しやすい」
no「それだけですか?」
ya「……」
no「ふふ」
ya「笑うなよ」
no「すみません」
ya「……なおきりさんは?」
no「僕ですか?」
ya「俺のこと、どう思ってるの」
今度は。
なおきりさんが黙る。
そして。
no「……大切ですよ」
ya「……え」
no「秘密を話せるくらいには」
ya「……」
no「それに」
少しだけ、声が柔らかくなる。
no「ゆあんくんといると、楽しいです」
ya「……」
胸の奥が。
また、うるさくなる。
――撮影終了。
外に出ると、雨が降っていた。
ya「…うわ…傘、持ってない」
no「僕持ってます」
ya「じゃあ、俺は走って帰る」
no「風邪を引きますよ」
ya「でも……」
no「一緒に入りませんか?」
差し出された傘。
ya「……いいの?」
no「もちろん」
二人で傘に入る。
自然と距離が近くなる。
肩が触れそうになる。
ya「……近い」
no「雨ですから」
ya「……そうだけど」
no「嫌ですか?」
ya「……嫌じゃない」
no「なら、よかった」
雨の音。
足音。
そして。
隣にいる、なおきりさん。
ya「……ねえ」
no「はい?」
ya「明日も……一緒に帰る?」
no「もちろんです」
ya「……そっか」
少しだけ。
嬉しい。
マンションに着く。
エレベーターを降りる。
いつものように、隣同士の部屋の前。
no「今日はありがとうございました」
ya「こっちこそ」
no「では、おやすみなさい」
ya「……おやすみ」
なおきりさんが部屋へ入ろうとする。
その瞬間。
ya「……なおきりさん」
no「はい?」
ya「……明日」
no「はい」
ya「……朝も、一緒に行かない?」
なおきりさんが目を丸くする。
そして。
no「……もちろんです」
ya「……じゃあ」
no「はい」
ドアが閉まる。
ya「……」
自分の部屋に入る。
背中をドアに預ける。
ya「……なんでだよ」
昨日より。
もっと。
この人のことが気になる。
ただの共演者だったはずなのに。
秘密を共有しただけだったはずなのに。
ya「……なんで、こんなに嬉しいんだよ」
スマホが震える。
画面を見る。
なおきりさんからだった。
『明日の朝、迎えに行きますね』
ya「……ほんと、ずるい」
返信画面を開く。
少し迷って。
『待ってる』
送信。
すぐに既読がつく。
『はい。おやすみなさい、ゆあんくん』
ya「……おやすみ」
スマホを胸元に置く。
そして。
まだ自覚していない。
この気持ちが。
ただの「特別」では済まなくなり始めていることを。
――第3話 END
1日で♡20もありがとうございます!
めっちゃ嬉しいので今日2話投稿します!
これからもよろしくです!🥺
コメント
1件
「うわっ……この回、めっちゃエモかった……!」 朝の迎えからカフェ、撮影中の視線の合わせ方、傘の中の距離……ひとつひとつが“近づいてる”感じをじわじわ見せてきて、胸がぎゅっとなりました。なおきりさんの「忘れてませんよ」からの不意な優しさ、ほんとずるい(褒めてる)。最後のLINEで“まだ自覚してない”って書かれると、次がどうなるか気になって仕方ないです……!! 2話投稿、めちゃくちゃ嬉しいです。ありがとうございます!🥹