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チャンスの手が、強くエリオットを引き寄せる。
もう逃げ場はない。
呼吸が重なって、視線が絡んで——
今度こそ、来る。
エリオットも、もう逸らさない。
逃げない。
ただ、じっと見てる。
「……来いよ」
小さく、挑発するみたいに囁く。
チャンスの理性が、完全に切れかける。
その瞬間——
ピンポーン。
間の抜けた音が、部屋に響いた。
ぴたり、と全部が止まる。
「……は?」
チャンスの低い声。
エリオットは、一瞬だけ目を見開いて——
次の瞬間、吹き出した。
「っ、はは……最悪」
肩を震わせながら笑う。
でも、まだ距離は近いまま。
チャンスは動かない。
というか、動けない。
さっきまでの熱が、行き場を失ってそのまま残ってる。
もう一度、チャイムが鳴る。
ピンポーン。
今度は少し長く。
「……出ないのか」
低く聞く。
エリオットは笑いを堪えながら、
「出るよ」
と言う。
でも——
すぐには動かない。
わざと。
まだ、近いまま。
「ねえ」
「……なんだ」
「今のさ」
目を細めて、くすっと笑う。
「めちゃくちゃいいとこだったのにね」
完全に煽り。
チャンスの眉が寄る。
「……誰だ」
「さあ」
またチャイムが鳴る。
今度はドンドン、と軽くノックまでつく。
現実が、無理やり割り込んでくる。
エリオットはようやく体を離して、ドアの方に向かう。
でも、その途中で一度だけ振り返る。
「——続き、する?」
さらっと言う。
まるで何でもないことみたいに。
チャンスは答えない。
ただ、その視線だけで十分だった。
エリオットはそれを見て、満足そうに笑う。
「じゃあ、あとでね」
軽く手を振って、ドアへ向かう。
ドアノブに手をかけて——
一瞬だけ止まる。
小さく、息を吐いてから。
「……ほんと、タイミング悪すぎ」
ぼそっと呟いて、ドアを開けた。
外の空気が流れ込む。
さっきまでの熱を、少しだけ冷ます。
でも——
部屋の中にはまだ、消えきらない余韻が残ってる。
チャンスはその場から動かない。
拳を軽く握って、天井を見上げる。
「……くそ」
短く、吐き捨てる。
けどその声は、どこか楽しそうでもあった。