テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第8話文化祭
私が退院できたのは文化祭の二日前
大急ぎでセリフと動きを頭に叩き込むことから始まった
〈う〜ん、むずかしい……〉
教室の隅で一人頭を抱える
この放課後はすでに誰もいない
みんなに迷惑をかけまいと、必死に居残り練習をしているのだ
…まあ、これは建前だ
本音は琉生の横で演じたいだけ
ただの傲慢である
〈えっと…、ここは…〉
ぶつぶつと独りでに呟く
不意にぽんっと、肩を叩かれ飛び起きる
〈な、なに、!?〉
さすがの私もびっくりだ
「ほら、頑張るのはいいことだけどまだ退院したばっかりなんだから」
「無理はしないでね?」
心配そうな顔で琉生は言ってくる
〈なんだ、琉生か…w〉
〈琉生こそ、主役がなんでこんな時間までいるの?〉
「それはっ…、」
「…別に何でもいいだろ、」
夕日に照らされてなのか、顔が赤く見える
…今は知らないふりをしておいてやろう
〈そっ、私はまだ練習するけど、琉生は先に帰ってね?〉
と少し睨む
「えっ、」
〈え、じゃないの!〉
〈琉生は風邪を引きやすいんだから、さっさと帰って寝なさいっ!〉
ぐいぐいと教室の扉まで押す
「わっ、ちょっ…、まてよ、!」
戸惑ったように私の手を握って止めてくる
「…一緒に帰るって、選択肢はねぇのかよ、」
〈…え?〉
静かで紅い教室に沈黙が流れる
ひょろいはずの琉生の手は私よりも大きくて、力強くて
やっと琉生がちゃんと男の子なんだって思えた
そう思ったら、なんだか急に恥ずかしくなってしまって、
バシッ__
手を振りほどいてしまった
あまりの詰め寄り方に戸惑って、
〈ぁ…、〉
もう琉生が好きだって、知ってるはずなのに
それでも、この胸の高鳴りは止まない
〈っ…ごめ、私まだ練習するから…、〉
〈先に帰ってて、?〉
苦笑いをすることしかできなかった
暗くなる校舎
もうすっかり日が暮れた
最終下校時刻まで残っていた私
琉生は足取り重く帰ってくのを3階教室から眺めるしかできなかった
〈はぁ…、何やってんだろ私、〉
とぼとぼと一人で校門へ向かう
「こら、おっせーぞ」
〈ひゃっ!?〉
思わず情けない声が漏れた
〈あれ、?琉生?なんでここにまだいるの、?〉
〈帰っていかなかった…?〉
「帰ってねーよ」
「こんな遅い時間に女子一人で帰らせるわけねーだろ」
そう言ってくれた言葉がただただ嬉しくて
泣きそうになるくらいに胸が一杯になった
〈でも、私は帰ってっていったよね、?〉
〈あれから2時間くらい経ってるけどずっとここにいたの…?〉
琉生は照れくさそうに頭を掻く
「…そんなことはどーでもいいだろ、」
「さっさと帰んぞ」
そう言って自然に私の外側に並んで歩く
気遣いのできるいい奴だ
それにしても、心無しか私が事故にあってから、おどおどとしていた性格が少しまっすぐになったように思える
なんだか…、涼に似てきたようにも思える
そう考えたら少しだけ面白く、笑みが溢れる
それが嬉しくもあり、リードされてなんだか癪な気持ちもある
そのまま少し話しつつそれぞれの家に帰って行った
ガヤガヤ____
校門の前が人集りでいっぱいになる
呆れるほどの人混みに目が眩む
〈うっわ、すっごい人だね…〉
〈ここって毎年こんなに人集まるの?〉
隣で見ていた涼に聞く
『まあ、今年はすげぇな』
『でも毎年結構な人はいたぞ、来年受験してくる1年生や、在校生の親とかな』
なるほど…、と教えてくれる涼の横で頷く琉生
〈私こんな人の中で劇するの緊張がハンパないんだけど…w〉
「それは僕も涼もおなじだよ」
『3人で、頑張ろうぜ?』
自信あり気に、でも心無しか手が震えている涼と琉生が鼓舞してくれる
〈そうだね、!3人でやり遂げよ!〉
〔おいおい〜、俺等だって混ぜてくれよ!w〕
と、クラスの皆が集まってくる
〈そうだよね!w〉
クラス30人で意気込む、壮絶な劇
結果はどうなるかわからない
それでもこの皆でやり遂げて成功させることを夢見ている
次回第9話⇒騎士vs王子
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#オリジナル
蝶姫
33