テラーノベル
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#独占欲
住所を見て「まさか」とは思ったが、近すぎるだろ……。
俺は金曜日の昼休み、小森の名刺に記載された住所『ひだまりメディカルクリニック』を、再検査のために訪れていた。なんとそこは、俺の働く会社のビルの、すぐ裏手にあるビルの2階だった。
(今日の結果さえ良ければ、あの24時間監視アプリとも、あのお節介なコメントとも永遠におさらばっすよ!)
意気揚々と受付を済ませ、待合室で待つこと数分。名前を呼ばれ、処置室のドアを開けて採血台の椅子に座る。 そこに現れたのは──。
「はあっ!?」
「王子谷さん、お久しぶりです! そんなに驚かなくてもいいじゃないですか、失礼ですよっ!」
白衣に身を包んだ小森が、少しだけ頬を膨らませていた。彼女は普段ここで看護師をしており、月に数回、会社で健康指導面談(俺が捕まったアレ)をしているらしい。
「はい、じゃあ腕を出してくださいっ!」
彼女は手際よく、俺の腕にゴム管を巻いた。
実は、採血も注射も大の苦手だ。正直、今すぐこの椅子から転げ落ちてでも脱走したい。
「あの、もうちょっと力抜いてくださいね~?腕がガチガチになってますよっ?」
彼女は俺の強張った腕を優しくさすり、慎重に針を刺す場所を探している。
(……クソ。はやく終われ。どうせいつも失敗されて、二、三回は刺し直されるのがオチ……)
「……もしかして、王子谷さん。採血、苦手ですか? 顔色、白くなってますよっ?」
「べ、別に……」
「大丈夫ですよ。苦手な人は多いですから。……あ、血管さんがちょっと深いところに隠れんぼしちゃってますね。よしっ、少し温めて呼び出してあげましょう!」
彼女は一度席を外すと、温かい蒸しタオルを持って戻ってきた。それで俺の腕を包み込む。
(……あ。さっきより、なんか落ち着く……)
タオルの温もりと、彼女の丁寧な所作。 その後、彼女は迷いのない手つきで針を刺した。
チクッとした一瞬の刺激。だが、それだけだった。一度も刺し直すことなく、透明な管に赤い液体が満たされていく。
(……ほぼ痛くなかった。しかも一発! あいつ、看護師としてのスペック、めちゃくちゃ高っ!)
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