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絶対辰哉
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封筒を開いた夜から数日。
翔太は眠れなくなっていた。
目を閉じれば。
契約書の文字が浮かぶ。
“退所”
たった二文字なのに。
それだけで今まで積み上げてきたものが、全部崩れてしまう気がした。
────────
💙side
朝。
時計は五時を指していた。
結局一睡もできなかった。
ソファに座ったまま朝を迎える。
スマホを見る。
未読が一件。
涼太
《今日は寒いみたいだから暖かくしてね》
思わず笑ってしまう。
そんな連絡を送ってくるのは、世界中で宮舘だけだ。
《了解》
短く返す。
送信ボタンを押したあと、画面を見つめたまま動けなかった。
(今なら言えるかな)
「もう辞める」
その一言を打ち込む。
でも。
数秒後には全部消していた。
────────
スタジオ。
今日は歌番組のリハーサル。
朝からダンスを確認し、立ち位置を合わせる。
💛「じゃあ頭から」
音楽が流れる。
全員が踊り始める。
翔太もいつも通り体を動かす。
でも。
少しだけ集中できない。
「ストップ!」
照が声を掛ける。
💛「翔太」
💙「ごめん」
💛「珍しいな」
💙「ぼーっとしてた」
💛「一回休もう」
💙「いや、大丈夫」
そう言って笑う。
また笑う。
その笑顔を。
宮舘はずっと見ていた。
────────
❤️side
違う。
今日は本当におかしい。
振りを間違える翔太なんて、ほとんど見たことがない。
それくらい心ここにあらずだった。
休憩時間。
翔太は一人でスタジオを出ていく。
宮舘は少し遅れて後を追った。
屋上。
冷たい風が吹いている。
翔太はフェンスにもたれ、街を見下ろしていた。
❤️「こんなとこにいた」
振り返る。
💙「……また来た」
❤️「うん」
翔太は苦笑した。
💙「最近よく探すね」
❤️「探すよ」
❤️「大事だから」
その言葉に。
翔太は何も返せなかった。
────────
二人で並んで景色を見る。
しばらく無言。
静かな時間だけが流れる。
やがて。
宮舘がゆっくり口を開いた。
❤️「俺ね」
❤️「昔から翔太のこと見てるけど」
❤️「今が一番つらそう」
翔太の肩が小さく震える。
❤️「何も言わなくていい」
❤️「でも、一つだけ約束して」
💙「……何」
❤️「一人でいなくならないで」
その瞬間。
胸の奥で何かが音を立てた。
“いなくならないで”
その言葉は。
まるで全部知っているみたいだった。
💙「……」
❤️「約束できる?」
翔太は答えられない。
約束できない。
一年後。
自分はこの場所にいないつもりだから。
黙ったまま俯く翔太を見て、宮舘は少しだけ笑った。
❤️「答えられないなら」
❤️「俺が隣にいる」
❤️「嫌って言われても」
❤️「離れない」
その真っ直ぐな言葉に。
翔太は思わず顔を上げた。
💙「……なんで」
❤️「幼なじみだから」
❤️「それだけじゃ足りない?」
翔太は笑った。
でも。
その笑顔と同時に、目には涙が滲んでいた。
慌てて顔を背ける。
💙「風強いな」
誤魔化した。
涙なんて流していないふりをした。
宮舘も気付かないふりをした。
それが今の翔太にできる、最後の優しさだと分かっていたから。
────────
その日の夜。
翔太のスマホが鳴る。
マネージャーからだった。
『渡辺さん、来週、正式な手続きについてお話ししたいので、お時間いただけますか』
画面を見つめたまま、動けない。
返信を打とうとした、その時。
また通知が届く。
涼太
《明日、ご飯行こう》
短い一文。
いつもなら。
「行く」
そう返していた。
だけど。
指は止まったまま動かない。
返事を送れない翔太と。
返信を待ち続ける宮舘。
二人の距離はすぐ隣にあるのに。
心だけが、少しずつ離れ始めていた。
コメント
3件
だてさんの性格の良さがめっちゃでてる〜😭
びやぁああああああ!! 辛い辛い辛い辛い…っ笑 死んじゃう笑
第9話、読み終えました……。 屋上のシーン、特に宮舘の「一人でいなくならないで」って台詞が刺さりました😢 全部知ってるみたいに言えるのが幼なじみの強さというか、限界の優しさというか……。 答えられない翔太の沈黙と、“風強いな”って誤魔化すところ、すごくリアルで胸がぎゅっとなりました。 最後の「心だけが、少しずつ離れ始めていた」で、余韻がすごいです。 続きが気になります……!