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「えっ? ルイ王子ですか?」
私は思わずルイ王子のそっくりさんを見つけて声をかけてしまった。
「レナード王子ですよ。イザベラ姫」
金髪碧眼の王子様のような彼は、見惚れるような優雅な仕草で私の手の甲に口づけてきた。
なぜ私の名前を知っているのだろう、私がカルロスからイザベラ様と声をかけられたのを聞かれたのだろうか。
「あの急にお声掛けして驚かせて申し訳ございません、人違いです。私のよく知っている人に似ていたので」
ルイ王子とは1年半近く会っていない。
彼は今12歳になっているだろうが、目の前の男性は成人しているくらいの年齢に見える。
それにしても周りの女性達がみんな彼を見ているのが分かる。
彼自身が美しすぎて、スポットライトが当たっているように発光している。
「イザベラ姫は私が見てきた誰とも似ていないくらい、可愛らしいですね」
レナード王子と名乗る彼は、とてつもなく甘い声で私に囁いてきた。
なんだか、クラクラするような甘い香りが彼から漂っている。
これが超一級のイケメンの匂いうというやつなのだろうか。
「あの、素敵な香水をつけていますね。とても良い香りがします」
なんだか、脳が正常に機能しなくなってきた気がする。
自分でも初対面の人にキモいことを言ってしまった自覚があった。
「特に香水はつけてませんよ。イザベラ姫は愛らしい香りがします。実は私はあちらの店のオーナーで今から店の様子を見に行くところなのです。イザベラ姫もお連れしても宜しいでしょうか?」
彼が私をエスコートしようと手を差し出してくる、私などが皆が注目しているような彼にエスコートされて良いのだろうか。
愛らしい香りと言われたが、今日は暑いし汗臭かったりするのではと心配になるも気がついたら彼の手に私は手を添えていた。
「アーデン侯爵よ。今日も、本当に素敵」
レナード王子の正体は侯爵だったらしい。
「あの、お若いのにもう爵位をお継ぎになるなんて優秀なのですね」
私の言葉にゆっくりと、レナード・アーデン侯爵は私の顔を覗き込み薄っすらと微笑む。
彼の碧色の瞳にときめきまくって赤面している私の顔が映っている。
「申し訳ございません。イザベラ姫の愛しさに心を囚われていて、可愛らしいお声を聞き逃してしまいました」
もう一回同じことを言ってくだらない事を言ったと思われてしまわないだろうか。
話を聞いていないと言われて本来なら不快に感じるはずなのに、私の脳はオキシトシンを大量に分泌し出していた。
「い、いえ、私は特に大したことは言ってません。お店とても繁盛していますね。私もお店をやっているのですが開店休業状態なので、これだけお客を呼べるのがいかに凄いか分かります」
明らかに高級宝飾品店なのに、店は格安スーパーの特売日並みに混んでいた。
「このような可愛いお姫様がどのようなお店をやっているのですか?」
私に目線を合わせるように彼が甘い声で囁いてくる。
彼の金髪が窓から差し込む太陽光を浴び、宝石のようにキラキラと輝いている。
周りの女性達がみんな彼と話したそうなのに、私を特別扱いするように興味を持って質問してきてくれて嬉しい。
「け、結婚相談所です。あの恋愛運に恵まれない女性を助けたくて⋯⋯」
私はときめき過ぎて緊張のあまり声が震えるのが分かった。
「イザベラ姫は見た目だけでなく、心まで美しい方なのですね。あなたを知ってしまったら、男は皆あなた以外との結婚を考えられなくなりますよ」
結婚相談所がうまくいかないのは、私が魅力的すぎるからだと彼は言っているのだろうか。
「レナード様のお店、素敵なジュエリーがたくさん売っていますね」
値段を見ると今まで見た宝飾品店よりも0の数が多い。
カルロスも十分なお金をルイ王子から預かり持っていたが、私もイザベラの宝石を売ることで旅の資金を増やしてきた。
宝石を売る時に宝飾品店に寄ったから、私はレナード様の店が他店に比べかなり割高だということは理解していたはずだった。