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澪の強い希望で、昼から浜辺でバーベキューが始まった。近所の人が入れ替わり立ち代わり、持ち寄り合って、炭火を消して解散になった時には、もう陽が傾き始めていた。
人の気配がすっかり無くなった浜辺を、二人連れだって歩く。
「何だか濃い2日間だったな」
由良は逆光の中に瑞基の横顔を見やりながら呟いた。
こんなに賑やかに過ごしたのは初めてだ。
明日の朝には帰途につくと思うと、名残惜しい気がする。
「……そうだね」
珍しく生返事だ。
今日の瑞基は様子がおかしい。
時々、心ここにあらずといった感じで海の方をぼんやり眺めていたり、かと思えば過度にスキンシップを求めて来たり。
何処からも死角になるような岩場の陰まで来ると、瑞基は突然真剣な顔になって、由良の両肩を掴んだ。
「由良、キスしていい?」
「何で今更、許可取ろうとしてくるんだ」
いつも、油断したときに急にキスしてくる癖に。改めてそんな事を言われると、どう顔を作ったらいいか困る。
「……駄目?」
「…いいです。はい、どうぞ」
何故か敬語になりながら、目を閉じて顎を上げる。頬に、瑞基の大きく硬い掌が触れるのを感じた。
唇が合わさった後、後ろ頭に手が回された。ぐっと押さえられて、キスがより深くなる。
舌が絡んで来たことに動揺して離れようとしたが、瑞基はそれを許してくれない。
「……ンっ」
吐息が漏れる。
目を開けて見ると、瑞基と目が合った。
熱のこもった視線だ。更に由良を求めて来るような。
観念して目を閉じて、由良は瑞基の背中に腕を回した。
どれくらいの間、そうしていたのだろう。
「も…駄目。オーバーヒートだ」
本当に頭から湯気が出そうだ。
瑞基に全体重を預けて寄り掛かる。
それを難なく受け止めて、瑞基は身体を包み込むように抱き締めてくれた。
「美味しかった」
ぺろ、と瑞基は舌を出して唇を舐めた。
「!ばかやろ」
勢い良く突き放し、走って置き去りにしようとした。が、砂利の上でもあり、そもそも由良は余り速く走れない。
はっはっはっは、と低い笑い声を発しながら大股で歩いて来た瑞基に、あっという間に横に並ばれてしまった。
「どこに行こうというのかね」
腕を絡めるように手を繋がれる。
「可愛いなー。走り方まで」
目尻が下がった笑顔。いつも通りの瑞基に戻った、と感じた。
翻弄されっぱなしは不本意だ。
由良は瑞基の襟首をぐいっと引き寄せる。
鎖骨の下あたりを狙って強く吸い付いた。
「へあぁ」
不意の反撃に、妙な反応をする瑞基。
「俺を甘く見すぎだ」
由良の方が瑞基の手を引きながら、 すっかり夕陽の色に染まった海を後にした。
コメント
1件
ああ、もう、瑞基のあの「キスしていい?」は反則ですね…!普段あんなに強引なくせに急に真面目になるから、由良が敬語になるのも分かります(笑)。最後の由良の反撃、めちゃくちゃ良かったです。「甘く見すぎだ」って言いながら吸い付くなんて、普段翻弄されっぱなしの由良の意地が感じられて好きだなあ。夕陽の浜辺、素敵なシーンでした🌷