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「 「いらっしゃーせー!!!」」
俺は、どこにでもある居酒屋でフリーターをしている。
常連の近所のおっちゃん、仕事帰りの会社員、ママ友の集まり。たまに家族連れも来る。
カウンターにテーブル席と少しの座敷。
本当に、どこにでもある普通の店だ。
そんな店に、突然ここ一ヶ月くらい毎日のように来る客がいる。長身で小顔のハーフ。細い体で頼むのは決まって唐揚げとハイボール。
酒癖が悪いわけでもなく、他の客に絡むこともない。
だがひとつ、俺には気になることがあった。
最初は偶然だとか、気のせいかもしれないと思っていた。でも、カウンターに立っている時、注文を取る時、料理を置く時、会計の時、じっとこちらを、いや、俺だけを見ていた。
声をかけてくることはなく、世間話もせず、
ただ、じっと俺を見ている。
その視線は、色っぽい、なんて言葉が当てはまっているかわからないが、妙に熱を帯びている気がして、自分で言うのは烏滸がましいが、好意を向けられているのではないかと勘違いしそうになる。
……まさか。いや、違うだろ。
そう思うのに、長いまつ毛が気怠そうに持ち上がり鋭い視線に捕まると「もしかして」という考えが頭をよぎってしまう。
喋ったこともない客だ。
ただの、よく来る常連。
それだけのはずなのに。
ある日の会計後、彼はレジの前でいつものようにじっと俺を見る。
次の瞬間、ふっと、口元だけが緩んだ。
初めて見る笑顔に心臓が跳ねたのがわかった。
「あ……りがとうございました」
そう言うのが精一杯だった。
次の日も、彼は来た。
いつもと同じ席で、いつもと同じ唐揚げとハイボール。
その日の帰り際、レジを挟んで彼は少しだけ身を乗り出し 「……また、明日来るね」と 耳元で、低く囁いた。
俺は一瞬、何も言えなくなって、ただ頷くしかなかった。
さらに次の日。その日は、店が休みに入る前日だった。
彼はいつもより遅く来て、カウンターのいつもの席に座った。
おしぼりとお冷を置く俺の手首を押さえ、顔を上げると、微笑みながら「……待った?」と言った。
俺は一瞬、言葉を探した が、上手い返しなど思い付きもしない上に、 肯定も否定もどちらも口にする気になれなくて、ただ、曖昧に笑う。
彼はそれ以上、何も言わなかった。
閉店後、暖簾を下ろしに外に出ると「おつかれ」と背後から声がするので振り返る。
🤍今日は、もう終わり?
🩷……終わりだけど
🤍このあと時間ある?
🩷え、あ、
言い終わる前に、フッ と笑って顔を寄せられた。
🤍じゃあ、そこのコンビニで待ってる
それだけ言って、 返事を待たずに立ち去っていった。
閉店作業後。
ダッシュで着替えて、鏡の前に立つ。
……まさか、って思ってた。
もしかして、って何度も考えた。
その答え合わせが、もう今そこにある。
早鐘を打つ心臓をなんとか抑え込み、一歩踏み出した。
コメント
3件
ねぇ!続きは?😂 店員さん!続き、おかわり🍺 絡みも追加で🍢
続きますか!?!?🫣