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榎本くもり
11,214
Sea Otter2026
38
NAL
97
一話目から頑張ってみました!
是非読んでみてください
産声とともに、世界が急速に色を取り戻していく。 この不快なほどに鋭敏な五感と、肺が引き裂かれるような空気の冷たさは、もう聞き飽きた劇の開幕のようだった。 これで、ちょうど百回目だ。 私は、自分がまばたきをするよりも自然に、過去九十九回の人生をすべて記憶している。 ある人生では国を救う英雄として祭り上げられ、またある人生では大逆罪人としてギロチンにかけられた。世界の富をすべて手に入れた大富豪の夜もあれば、ただ道端で飢え死にするだけの名もなき浮浪者の朝もあった。男も女も、聖者も悪人も、あらゆる役割を演じ終えた私の魂は、もはや擦り切れて透明になりかかっている。「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」 産婆のしわがれた声が響く。百回も繰り返せば、言語の壁などとうに消え去っている。私は赤子の肉体に閉じ込められた老いた精神で、ただ薄暗い天井を見つめていた。 今世では何をしようか。いや、もう何もする必要はない。 あらゆる愛を経験し、あらゆる絶望を味わった。これ以上、この世界に新しい驚きなど残されているわけがない。親になった者の喜びも、剣を握った時の高揚も、すべてはただの既視感(デジャブ)に過ぎない。「見て、あなた。この子の右手……」 抱き上げた母親が、喉の奥を鳴らすような異様な声をあげた。歓喜ではない。生理的な嫌悪と恐怖が混じった、獣のような喘ぎ声だった。 その声に引かれるように、私は自分の小さな右手の平を目の前に掲げた。 ――そこには、不気味なほどにどす黒い、人間の『眼』のような形の痣が刻まれていた。(……何だ、これは) 冷たい戦慄が、赤子の未発達な背筋を駆け抜けた。 過去九十九回、私の肉体は毎回異なっていたが、魂の記憶以外の「初期設定」は常にまっさらだった。生まれながらにして肉体に深く刻まれた、この醜悪な痣。 私がその『眼』を見つめた瞬間、手の平の皮膚が、ぐにゃりと内側に蠢いた。 ――パチリ。 痣だと思っていたものが、肉を裂いて開いた。それは本物の、粘膜に濡れた人間の眼球だった。 その眼球が、ぎょろりと動き、まっすぐに私の「本物の目」を睨みつけてきた。 その瞬間、頭の中に直接、九十九人分の、聞いたこともない怨嗟の声が一斉に流れ込んできた。『見つけた』『見つけた』『見つけた』『見つけた』『見つけた』 それは、過去の人生で私が殺した者、あるいは私を殺した者たちの、決して消えることのない呪いの記憶だった。 百回目の人生。それは退屈の終わりではなく、過去九十九回分のツケをすべて支払わされる、終わりのない地獄の始まりだった。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 読みました…これは、もう、最初から心臓掴まれる感じでしたね。 百回目の人生で“退屈”を迎えた主人公が、まさか生まれながらにして“呪いのツケ”を背負わされるなんて——右手の痣が眼球だった瞬間、ゾッとしました…あの「見つけた」の怨嗟の声、鳥肌立ちましたよ。 転生ものの新しい形というか、救いのない始まり方が逆に好みです。続き、すごく気になります…!