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包みの中に入っていたのは、4つの手作りの「真鍮製のキーホルダー」でした。
それぞれに僕たちの名前と、鈴鹿サーキットのコースの形が刻まれています。
「これ……あかりが図工の時間に作ってたやつだ」
大樹が思い出したように声を震わせます。あの日、彼女が隠すようにして作っていたのは、10年後の僕たちへのプレゼントだったのです。
お母さんは静かに微笑み、僕たちに告げました。
「あかりはね、自分が長く生きられないと悟ったとき、悲しむことよりも『忘れられること』を怖がっていました。でも、この2026年の今日、あなたたちがここに来てくれたことで、あかりの時間はようやく完成したんだと思います」
2026年1月21日、午後6時。
鈴鹿の街に完全な夜が訪れ、一斉に街灯が灯りました。
「ねえ、あかりちゃんに報告しよう」
真央の提案で、僕たちは展望台のフェンスに向かって並びました。
「大樹、建築家になる夢、まだ追いかけてるぞ!」
「私、真央は、春から地元で先生になるよ!」
「理恵は、あかりちゃんが好きだった本を広める仕事に就くね」
「僕は……僕は、あかりが大好きだったこの街を、ずっと守っていくよ」
4人の声が夜の静寂に響きます。
真央の提案で、僕たちは展望台のフェンスに向かって並びました。
「大樹、建築家になる夢、まだ追いかけてるぞ!」
「私、真央は、春から地元で先生になるよ!」
「理恵は、あかりちゃんが好きだった本を広める仕事に就くね」
「僕は……僕は、あかりが大好きだったこの街を、ずっと守っていくよ」
4人の声が夜の静寂に響きます。
すると、どこからか、あかりの声が聞こえたような気がしました。
『みんな、かっこいいよ。』
その瞬間、僕たちの胸元にあるキーホルダーが、街の光を反射して一際強く輝きました。
「行こうか。僕たちの20代は、まだ始まったばかりだ」
僕がそう言うと、みんなが力強く頷きました。
展望台を降りる僕たちの背中を、再び強い風が吹き抜けました。
それはもう、僕たちを立ち止まらせる冷たい風ではなく、未来へ向かって力強く押し出してくれる、温かな「鈴鹿の風」でした。
タイムカプセルに閉じ込めていたのは、過去の思い出だけじゃない。
あの日、5人で誓った「未来への勇気」だった。
僕たちは一度も振り返らず、光り輝く街の中へと、それぞれの足で歩み出しました。
(完)