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最高!!🥰
「そんなに食べてない自覚はなかったんです」
朝を抜くことはよくあったが、昼食と夕食は食べるようにしていた。
「じゃあ、ちなみに昨日何食べたか言え。嘘はつくなよ」
なぜメニューの発表なんかしなくてはいけないのだろう。
しかし彼に医療費を負担させてしまったため、正直に答えようと思った。
「お昼は、パンの耳で作ったフレンチトーストと夜はおにぎりです!ほとんどその繰り返しです」
「お前、料理ができないのか?」
「できます!ただお金がなくて、材料が買えないだけです!」
言った後に後悔してしまった。
昔から自炊はしている。
歳相応、もしくは料理はできる方だと自分では思っていたため、湊さんの一言に反抗をしてしまった。
「あっ、すみません。今のは忘れて下さい。料理ができないだけです」
ふーんと彼は呟いた。
沈黙が続く。
「お前、とりあえず今日はこのまましばらく寝てろ?ここにいて、お前のことを心配するようなやつはいないんだろ?」
「でもっ!」
湊さんだって忙しいはず。
他人の部屋で一人、寝ているのはおかしい。
「安心しろ。俺は今日オフだし、ここにいる。書店の方も違うパートに頼んだから大丈夫だ」
そう言って彼は立ち上がり
「あっちの部屋にいるから。なんかあったら呼んで。無理に動こうとするなよ。いいな?」
そう言って部屋を出て行った。
が、一旦すぐ戻ってきて、ベッドサイドにスポーツドリンクを置き
「水分摂れよ」
彼なりの優しい言葉をかけて、部屋から出て行った。
店長の時やアーティストとしての湊さんとは全然違う。演技力に驚かされる。
私は、ここで休んでいていいのだろうか。
無理をして動いたら、絶対に湊さんに怒られる。
彼の言葉に甘えて、大人しく休ませてもらうことにした。
目を閉じる。
こんなふかふかのベッドに寝たのは初めてじゃないかな。
そんなことを考えながら眠りについた。
何時間、眠っていたのだろう。
こんなにゆっくり眠れたのは久しぶりだった。
身体も先ほどより動くような気がして、起き上がってみる。
「あっ、動ける」
部屋の中をよく見ると、ここは寝室なのだろう、ベッドが一つと大きな本棚、小さな机とソファしか置いていなかった。
部屋がいくつもあるのは、湊さんくらいになれば当たり前だろう。
「お礼を言いに行かなきゃ」
ベッドから降りて、彼がいるはずのリビングへ向かった。
寝室のドアを開ける。
「湊さん……?」
彼の名前を呼んで、リビングと思われる部屋に入った。
「うわ、広い」
そこには大きな机とソファー、映画の中に出てくるような大画面テレビがあった。
物はそれほどなく、小物などの色も統一されており、落ち着いた雰囲気の部屋だった。
キッチンがあり、キッチンからもリビングを見渡せるようになっている。
「おお、起きたのか?」
湊さんは、ソファに座って、楽譜を見ていた。
仕事は休みだと言っていたが、完全な休みなど彼にはないのだろう。
「はい、クラクラしないし……。おかげ様で良くなりました。ありがとうございます」
湊さんは楽譜を机に置き、私の方に向かって歩いてくる。
具合が悪くて朝の出来事はあまり覚えていないが、まじまじと彼を見ると、身長は高いし、顔立ちも綺麗。
切れ長の目、面長の顔、がっちりとした男性らしい身体つき。やはりカッコいい、近くで見て改めてそう感じてしまう。
「なんだ?」
私が無言で彼を見つめていたため、疑問の視線を向けられた。
はぐらかすのも難しいと考え
「いや、あの。やっぱりカッコいいなと思って……」
性格的に難ありなことがわかったが、容姿は私が追いかけていた湊さんそのままだった。
ふっと笑い
「当たり前だろ?」
自信があるのだろう、その表情は揺らがなかった。
「これから、飯を食べるぞ?」
「えっ?」
「お前が寝ている間に作った。医者からも消化の良いものなら普通に食べても良いと言われてる。口から栄養を摂るのが一番だ。俺が作った料理を食える機会なんてほぼないんだから、有り難く食べろよ?」
そう言って彼はキッチンに向かった。
「お前は、そこの机の椅子に座っていろ」
有無を言わさない。
彼の指示通りに、キッチン前の机の椅子に座る。
そこに運ばれてきたのは、野菜スープと少し柔らかいご飯、茹でた豚肉に味がついたもの、オレンジだった。こんな豪華なご飯、久しぶり。
彼も同じものを食べるようだ。
「いただきます」
彼は両手を合わせ、食べ始めた。
私が呆然としているのを見て
「おい、食べろ。せっかく作ったんだ、もったいないだろ?」
私も彼と同じように手を合わせ、いただきますと言った。
箸を持ち、一口、スープを飲んだ。
「美味しい……」
誰かが作ってくれた温かいご飯なんて、何か月ぶりだろう。
ここのところ、外食すらできなかった。
「美味いだろ?」
私の美味しいを聞いた彼は、にこっと笑った。
こんな優しい顔もするんだ。
次は、豚肉を食べる。
「美味しい……」
お肉を食べるのも久しぶりだ。
あれ……?どうしてだろう。
気づいたら、涙が頬を伝っていた。
「お前っ、何、泣いているんだよ」