テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
莉久⚁⚄[低浮上]
33
#ご本人様には関係❌
第3話 俺を降ろしてくれ
人界へ戻る方法がある。
将軍魂がそれを知ったのは、調律を終えた帰りだった。
《降下・降臨後処置室》から、黒い衣の男が担当官に付き添われて出てくる。
「次の降臨まで三日は空けろ」
「明日でも動ける」
「降臨相の再構成が終わるまで待て」
将軍魂の足が止まった。
「今の男は、人界へ行っていたのか」
「ええ。降臨任務から戻ったところでしょう」
「天界から、人界へ降りられる者がいるのか」
汀生は、降臨が祈りや信仰、願い、恐れ、伝承に応じて相を顕すものであり、行き先を自由に選べる移動手段ではないと説明した。
それでも男の目には、天灯院へ来てから初めて強い光が戻っていた。
*
翌日、将軍魂は一人で魂路記録の窓口を訪れた。
以前に知らされたのは、副官がすでに人界へ再誕したという事実だけだった。どの世界の、どの土地へ渡ったのかまでは知らない。
「人界へ転生した魂の、今いる場所を知りたい」
「照会理由を伺ってもよろしいですか?」
「生前、俺の副官だった。会って、謝りたい」
担当官は照会記録を開き、男を見た。
「現在、その魂に関わる任務へ就いていますか?」
「いや」
「では、お伝えできる情報は限られます。転生後の名や姿、今生での生活、正確な所在は、任務に関わる方以外へは開示できません」
「何も分からないのか」
「開示できるのは、転生先の世界と、おおまかな所在区域までです」
「それでいい。教えてくれ」
開示されたのは、その二つだけだった。
将軍魂は、その区域の名を何度も確かめた。
*
天界事務局・降臨班。
将軍魂は相談卓の前へ立ち、担当官をまっすぐ見た。
「この地域へ、俺を降臨させてくれ」
担当官は区域の記録を開いた。
「この地域には現在、あなたへ向けられた祈りも恐れもありません。降臨を支える信仰や伝承も確認できません」
「なら、何か任務を作れないのか」
「降臨は、天界側で行き先と役目を作って送り出す制度ではありません。人界からの祈りや恐れへ応じて成立するものです」
卓の上で、男の手が止まった。
「では、俺は降りられないのか」
「天界の降臨としては、成立しません」
否定は簡潔だった。
だが、将軍魂は退かなかった。
「あいつに前生の記憶がないことは分かっている。謝れないなら、話しかけなくていい」
「名乗らない。近づかない。気づかせない。遠くから、生きている姿を一度見るだけでいい」
「祈りがなければ、それも降臨の根拠にはなりません」
「どうにか、人界へ降りる方法はないのか」
担当官は、すぐには答えなかった。
やがて区域記録を閉じ、別の照会先を表示する。
「灯台へ相談してみてはどうでしょう」
「灯台?」
「灯台所属者は祈りではなく、記録の観測や世界線調整の任務によって人界へ降下します。近隣へ向かう正規任務があるか、そこへ同行できるかを判断できるのは灯台です」
「会いたいというだけで、同行を許すのか」
「許可を約束はできません。天界とは別の基準で、人界への影響を審査します」
「相談を繋いでくれ」
将軍魂は、初めて自分から深く頭を下げた。
「頼む」
コメント
1件
読了しました🌷 将軍魂が「会って謝りたい」という一心で、天界のルールに必死に食らいつく姿がとても印象的でした。祈りも信仰もない場所に降りられないと言われても、頭を下げてでも方法を探そうとするその執着心に、胸が詰まります。 「遠くから一度見るだけでいい」という台詞が、本当に切なくて…。自分の想いを押し♡♡♡てでも、副官の無事を確かめたいんだなと。 灯台という新たな可能性が示されたところで続くのが、気になりすぎます。引き続き読ませていただきますね🤍