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宮毘羅
20
海路の長旅を終えた俺達は、今度は港から馬車を使って国境沿いの村モンドレイクを目指していた。
本来なら2日で到着する予定なのだが――
「申し訳ござややせん、こちらの道は落石が起きてる感じなんでー道が塞がれてるんすよ。どうか迂回路をご使用下さーい」
関所を守る若い帝国騎士から、そう伝えられ俺は苦い顔をする。
「迂回を勧められたのはこれで3度めだぞ。まっすぐいけばすぐに到着するのに、まるで余をモンドレイクから遠ざけようとしているように見える」
「いやー、別にそういうわけじゃないんすけどねー」
イライラする俺に対して、騎士は「すいややせーん」と全く感情のこもっていない謝罪をする。その軽さが余計にイライラする。
「どうされますか王子?」
フリーデの問に渋い顔を浮かべる。
「どうするも、通れないんじゃ迂回するしかないが。本当に落石ならな」
『僕がちょっと見てきてあげるよ』
聖剣から飛び出したナハト(コウモリ形態)が、馬車の窓から出て道路を見に行く。
しばらくして彼女が戻って来ると、俺の膝に着地し羽を畳みながら報告する。
「どうだった?」
「んー確かに岩で道は塞がってたけど、あれ落石じゃなくて土魔法で地面から隆起させた感じだったよ。すんごいトゲトゲの岩が道塞いでた」
「どういうことだ?」
騎士に聞くも「さーよくわかんないっすねー、もしかしたら野良魔道士のいたずらじゃないっすか?」と適当なことを言う。
この野郎、典型的な第三王子をなめてる系兵士だな。
すると同乗していたバルト将軍が馬車から降りると、その太い腕で騎士の胸ぐらをつかむ。
「貴様、殿下をわざと遠回りさせているのだったら、このバルト・アイゼンヴェルグが許さんぞ!」
なめられそうな俺達ではなく、本場暗黒騎士、それも将軍の怒声。
それまで耳ほじりながら、なめた態度をとっていた騎士は、脚をガクガクさせながら敬礼をする。
「ほ、本当にわたくしはなにも知りません! 上からの命令で、殿下をお通しするには危険なので、別ルートを勧めるようにと命令されただけであります!」
「ふざけるな! 殿下が来るとわかっているのならば、落石の除去ぐらいしておくのが当たり前だろうが! 何の為に関所を任されていると思っているのだ!」
「も、申し訳ございません!」
ものすごいパワハラだ。まぁ俺もロードレス砦にいたときは、こんな感じだったもんな。
「将軍、多分末端の騎士は関係ないんじゃない? 俺の予想だと、俺と交代するのを嫌がってる兄上が、無理やり遠回りさせて到着を遅らせてるんだと思う」
「こざかしいですな。イヤミル様にも帝国式筋力強化訓練を受けていただきましょう」
関所の帝国騎士は、困惑した様子でバルト将軍、フリーデ将軍を交互に見やる。
「お、お二方もご一緒されているのですか?」
「殿下の護衛が我々で、何か文句があるのか?」
「い、いえ決してそういうわけではありません。バルト将軍の第Ⅵ軍はその……王子殿下とはあまり仲が良くないと噂でしたので」
関所の騎士は、護衛についている3台の馬車を見やる。
そこにはフリーデ将軍の部下である、暗黒騎士たちが乗車している。
「帝国騎士として恩義に忠義で返しているまで。それより、ここを迂回したら何時間のロスになるのだ?」
「そうですね、少なくとも12時間は……」
「それでは夜になるではないか! 殿下を夜通し運べと言うのか!」
「も、申し訳ございません。この道をまっすぐ3時間半ほど行きますと、ネグロ村があります。そちらの領主であるエロモンド子爵に、殿下が宿泊できるよう手配しております」
エロモンド子爵か。いい名前だな。
「もうワシらを迂回させるつもりで、予定をたてておるな」
バルト将軍が関所の騎士を睨みつけると、彼は背筋を伸ばして硬直する。
俺は諦めて覚悟を決める。
「しょうがない、一旦ネグロ村に行こう。兄上が俺達の順路を決めてるみたいだし」
「よろしいのですか殿下? エロモンド子爵はイヤミル様派閥の領主ですが」
「俺暗殺されると思う?」
「ありえませぬ。我々暗黒騎士がいて、そのようなことは万に一つも起きません」
「じゃあネグロ村行こう。護衛よろしく」
俺達の馬車はパッカパッカと、当初の予定ルートを外れ村へと向かう。
騎士の言う通り、3時間ほどかけて、ようやくネグロ村が見えてきた。
村の規模は大きくなく、推定人口は200人程度か。
中央には大きな風車が回り、石造りの家が並ぶ。村の外周にはブドウ畑が広がっており、のどかそうな雰囲気が漂っているが。
「あれは……黒煙?」
なにか黒いものが空に上っているように見える。
焼畑とかやってるのかな?
――キキィィィッ!!
俺が煙に気づくと馬車が急ブレーキをかけ、鉄製の車輪が悲鳴を上げる。
車内が左右に大きく揺れた。
「きゃっ!」
隣のママ上が俺の方に倒れてきて、爆乳に顔が埋まる。
「うおっ!」
更に反対のヨハンナの胸にもダイブ。むにゅっと挟まれて完全に動けない。
運転手が慌てて声をはり上げた。
「申し訳ございません、大丈夫でしょうか!?」
「全然構わぬ。どうした?」
「村から煙が上がっております! 恐らく魔族に襲われているものと思われます!」
「なぬっ!?」
「王子はここで待機を、我々が向かいます!」
フリーデが俺を制止しようとするも、俺はすぐさまナハト(大犬形態)に飛び乗り、鬣を握って村へ駆け出す。
コメント
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第89話読みました〜!最初は関所でイライラする王子が面白くて、帝国騎士のなめてる態度に「わかるわかる」って思っちゃった笑。でもバルト将軍が胸ぐら掴んで一喝するところ、めっちゃスカッとした!やっぱり暗黒騎士たちって頼りになるんですね。最後に村の黒煙見て迷わず飛び出す王子、カッコよかったです。遠回りさせられた意味がこの先で明らかになるのかな…続きが気になります!