テラーノベル
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暁桜(あかつきさくら)は清和小学校六年生だ。毎日通学班の人たちと登校して、勉強して給食食べて帰る。こんな日常だった。「桜!一緒に帰ろ!」明るく、綺麗な声がして、桜は振り返った。「咲久!」 「やっほー、桜」そこにいたのは桜よりほんの少し背の低い女の子がいた。彼女は桜井咲久(さくらいさく)。桜の友達の幼馴染だ。「一緒に帰ろう、桜」「うん!行こう!」二人は並んで歩き出した。「咲久ってさ、すっごいモテるよね」桜は言った。「そう?」「そうだよ!咲久は何着ても似合うし、かわいいもの!」実際、咲久はよくモテる。幼稚園の頃から告白されたりしていた。そのたびに咲久は、「まだ、それは決められない。でも、これからも一緒に仲良くしてほしいな。」と言っていた。そして悔しがったり、男同士で火花を散らし合ったりする男も少なくはない。
「ありがとう。でも桜もモテてるよ。私、桜を好きな人を…」咲久が言葉を濁した。「え?誰?教えて」桜が聞いた。「え?…わかった。教えるね。それは…」咲久は最後まで言えなかった。「なおーん」という声を捉えたからだ。二人は無言で顔を見合わせた。「咲久…」「桜…」「この声、猫?」桜が言った。「なおーん」また聞こえた。二人はうなずきあった。そして声を頼りに歩き出した。草をかき分け、転びかけてもなお進み、二人はよく遊ぶ公園に到着した。「ここからだね」「わたしもそうだと思う」押し殺した声で話し合った。いつも明るく楽しくが桜のモットーだが、この時ばかりは、そんなふうにはいかなかった。そして探し続け、「いた!」咲久が声を上げた。「見つけた!?」桜は大急ぎで走っていった。そこには目をうっすらと開けた子猫がいた。全部で二匹。二匹ともキジトラという毛色で、その声はどんどん弱々しくなっている。これは急がなくては。そう瞬時に悟り、桜は赤いランドセルからタオルとホッカイロを取り出した。「咲久、今夏だよ?どうしてホッカイロなんて持ってるの?」咲久が驚いた様子で聞いてきた。「いざという時役立つと思ってね。詳しいことは後!」慌ただしく言ってそれからスカートのポケットからハンカチを取り出し、ホッカイロに巻き、子猫とハンカチで巻いたホッカイロをタオルに包み、抱きかかえて、「咲久!行くよ!」と言って走り出した。風に負けない素早さで咲久が追いつくのに時間がかかった。「桜!」桜と咲久が別れる道まで来た。桜はいなかった。かわりにボロボロの紙が置いてあった。
桜井咲久へ。
咲久、私、家に帰ったよ。うちはいろいろやってるから、この子を救えると思うんだ。またね
そう書いてあった。急いで書いたのがありありと分かる。字はミミズが這い回ったような字で書かれていたのだ。「桜…」咲久は呟いた。そしてぼうっとした目で帰った。
次の日、桜はこなかった。咲久は子猫と桜のことでいっぱいだった。6年間、桜と一緒のクラスだが、休んだことは一度もない。大好きな家族のために、真冬の川に入って魚を取ったこともあるが、その次の日もピンピンしていた。だから、心配だった。授業中も休み時間も給食中も桜の笑顔が頭をよぎってしまう。 そう言えば、桜、青蝶の使い魔って言われてたな。
そんな昔のことも思い出してしまった。だからなのか、5時間目の授業中、居眠りをしてしまった。生まれて初めて勉強中に居眠りをした。そんな咲久を心配した、担任の先生、小高沙織(こだかさおり)先生が心配した様子で、「桜井さん、大丈夫ですか?いつもと様子が違いますよ。少しでも体調が悪かったらすぐに言ってくださいね。」 「はい…わかりました」そう答えたものの、咲久は責任感があり、保健室に行く気にはなれなかった。6時間目になって、ようやく直ってきて、いつものように振る舞って授業をし、家へ帰った。「あれ?」家のポストにセピア色の封筒が入っていた。「なんだろう?」咲久は不思議に思い、その封筒を自室に持ち帰って開けてみた。
コメント
11件
続きが楽しみ!
新たなお話😲面白かったです〜このお話の続きが楽しみです👍