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夏目若葉
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月詠 涼
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#大人恋愛
坂野真夢
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臣桜
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大きな販促イベントが終わってすぐの金曜日。
サンゴは、約束通り、あかりと蘭と会社のすぐ二軒隣の飲み屋へ行くことになっていた。
「ごめんね。今日はどうしても帰りたくって」
「いや、サン先輩って記憶力ゼロでした?隣で聞いてましたって。まさか、あの日、俺のこと見えてませんでした?」
「見えてたけど、コンペ用の企画書のチェックもあるし……」
「今日できる範囲は全部チェックしてくれましたし、飲みに行くのに何も気にしなくていいですよ!」
「そう?ありがと〜〜」
肩を揺らして嬉しそうに俯くサンゴを見て、リュウジは不憫な気がして言葉を続けた。
「サン先輩が、わざわざ俺に伺いなんて立てなくていいのに……」
「ふふふ。一応ね。コンペのことは私の責任でもあるし……」
「まだ時間も少しありますし、大丈夫ですよ。でも、絶対飲みすぎちゃダメですよ!!」
「ええ〜?飲みすぎないよお」
「先輩の方が天然だし何するかわかんないのに……転んだり変なことしだしたらどうしよう」
「そんなわけないよ〜」
「へへへ」
就業時間にシフト表を押して、仲良し女子三人で、ルンルンで飲みに来た。
久しぶりの店内で、大好きな二人とビールを囲むと、楽しくて仕方なかった。
「めーっちゃ久しぶりだね!三人でここくるの」
「息抜きしたかったからうれしー!」
「あかり聞いてよ!!もうほんっと、超可愛いんだから!サンゴとリュウきゅん。ずっとユリ漫画読んでる気分」
「やーん!ユリって〜〜」
「私もこの前見ちゃったよ〜。サンゴのデスクのすぐ横にひざまづいて、サンゴのこと見上げてたんだから」
「えええ?何それ!!?詳しく聞かせて!!」
リュウきゅんの話で一通り盛り上がったあと、話は八村のことに移った。
「蘭と八村君のチーム、今回のイベントすごかったね!」
「うん。私途中からだしさ。八村が全部教えてくれたし、仕切って回してくれてた」
「さすがシゴデキくんはすごいな。あれで定時に帰ってて、驚き過ぎて声出たもん」
「ははは!すごいよね。あいつだけ、すでにエリート街道まっしぐらだし」
「もうすぐ部長だと思う……」
「まあ、八村がならなかったら、逆に誰がなるんだってくらいだしね」
「経理はどうなの?」
「あかりはもう、全川本部長のこと、怖くないの?」
「うん。クールすぎるとか思ってたけど、普通にいい人だった」
「ならよかった」
みんな、それぞれの悩みや気持ちを思う存分話しまくる。何を話しても聞いてくれる相手がいることに、いつも胸が熱くなる。三人でお店を出る頃には、いつもすごく心地よく、味方がいる気分を噛み締めて、幸せで満たされていた。
「これで明日からもがんばれるぞー!!」
「また来週か、来月でも、絶対に来ようね!」
「うん!!またそれを楽しみに生きるよー!!」
三人で駅の方へ歩き始めながら、サンゴはふと会社の3階を見上げてみた。すると、真っ暗なビルのそこだけ、うっすらと明かりがついているのが見えた。
(あれ?リュウくんの席のあたりだ……)
時計を見ると、もう11時を過ぎていた。コンペの発表でまだ残ってるにしては、だいぶ遅い時間だった。
(終電とか、大丈夫かな?)
「ごめん、会社に忘れ物したから、二人先に帰ってて!」
「うん!」
「サンゴ、気をつけて帰るんだぞ〜!」
「はーい!!」
サンゴは、あたりを見渡して真っ暗な会社に忍びこんだ。真っ暗な3階につくと、一つだけ明かりがついている机に、突っ伏して眠ってるリュウジがいた。
(あれ?寝ちゃってる!!)
サンゴが近づいても、全然起きる様子がない。
いつものワイシャツを脱いで、白い肌着らしきTシャツ一枚になったリュウジは、腕を組んで枕にしていた。
頬も、鍛えられた腕も、真っ白で柔らかそうで、すべすべの肌。
いつもは分けているのに、サラサラの前髪がおでこに降りていた。
眠っている顔はキリッとしていて、顎の角度や口元も、普段見せないような男らしい曲線に見える。
(あれ?リュウくんで間違いないよね?)
かっこよくて、思わずドキッとしてしまう。
「リュウくーん」と声をかけても、全然起きない。
「リュウくーん、終電何時〜?」
今度は、腕やほっぺを指先でちょんちょん、と突いてみる。
(わああ!柔らかい!!)
「ああ、先輩?」
ふと、リュウジはうっすら目を開けて、寝ぼけたまなこでコチラを見た。低くて掠れていて生々しくてかっこいい。
「大丈夫?すごく眠かったの?」
「うーん、寝ちゃってたー」
リュウジはまだ突っ伏したまま、コチラを見ながら、気だるそうにしていた。
「会社、真っ暗な中でここだけ灯りついてたし、びっくりしたよ」
「ちょっと行き詰まっちゃって……」
ゆっくりと起き上がると、「今何時だ?」と呟いて時計を見た。
「今日はもう帰って寝よ?」
「はあい……。サン先輩は?もう飲んできたの?」
リュウジは、まだ寝ぼけてるのか、掠れた低音ボイスのままだった。
(なんかすごいいい声)
「うん、すぐそこで飲んでたんだけど、会社がうっすら明るかったから心配になって」
「きてくれたんだ。ありがと」
目をこすりながら、コチラを見てニコッと笑う様子が愛らしい。
「終電逃したら大変でしょ?」
「うん」
「一緒帰ろ?」
「うん」
リュウジがシャツを来て、帰る支度をしている間、サンゴは辺りを見回して、書類を片付けた。そして、スタンドの電気を消して帰ろうとすると、急にリュウジが「えええ?」と驚いたような大声を上げた。
「なになに?どうしたの?」
あまりの声の大きさに、驚いて振り返ると、リュウジは鞄を抱きかかえていた。
「こんな真っ暗な中、帰るの?」
「そうだよ!逆にどうしろっていうの?……」
「めっちゃ怖いじゃん!!」
「怖くないよ?いつもの会社だよ?何言ってんのよ?」
「えええ?お化けとか出たらどうするんですか?」
「出るわけないでしょ?もう!!」
そう言ってる側から、何かがドサッと落ちた音がする。
「わあああああ!!!」
リュウジの大声に、サンゴまで驚いて肩がビクッとした。
「ちょ、もー!!驚きすぎだって!!書類が落ちただけだって」
サンゴが落ちた書類を拾い上げるためにしゃがむと、また彼は大声を出した。
「嘘だ!サン先輩どこ?追いてかないで!!」
リュウジが必死に腕を回して、サンゴを探している姿が可愛くて仕方ない。
「もー!!こっちだよ」
「どこ?」
彼が振り回している手を、ぎゅっとサンゴは捕まえた。
「ほら、私の手握ってて!一緒に行こ?後ろから私についてきて」
というと、リュウジは一生懸命後ろにくっついてきた。
「ひーーー!先輩、絶対離れないでよ?一人で行かないでよ?」
「そんなわけないし、なんでこれが怖いのよ?」
「プレゼンで酷い目にあった、課長のお化けとか出たらどうすんの?」
「出るわけないでしょう?」
「出そうだもん!」
そう言いながら、リュウジはサンゴの後ろでドタッと何かに足をぶつけていた。
「わああ!」
「んー?もしかして、リュウくん、暗いとこ見えづらいの?」
「うん。鳥目なの」
「なるほど〜!!なーんだ。じゃあ、全然見えないのか」
サンゴの明るい声を聞いて、おかしくなったのか、リュウジも声が明るくなる。
「ふふふ。なるほど〜って……」
「大丈夫!私めーっちゃ見えてるし、目、いいから。ほら、ここの廊下、本当に私の歩く通りに後ろついてきたら大丈夫だからね」
「はい」
腕を抱きしめるくらいの近い距離で、リュウジはサンゴの後ろにピッタリとくっついて歩いてきた。
(本当に、世話が焼けるんだから!)
そんなふうに思いながらも、サンゴはなんだかおかしくて、楽しい気分でいっぱいだった。
くっついていたせいで、普段よりかなり時間がかかって、なんとか会社の外に出る。「ふーー」とため息をつき、手を離そうと力を緩めると、リュウジはまだぎゅっと強く手を握ってきた。
「もう大丈夫だよ?」
「まだ俺、ドキドキしてて怖いんです!」
「そんなまさか……」
笑って茶化そうとすると、リュウジは眉をひそめて口を尖らせていた。
「俺、本当にこういうの苦手なんですよ」
そういうリュウジの唇が真っ青で、サンゴも驚いてしまう。
「わあ、気分悪そうだね。大丈夫だよ。駅まで繋いでようね」
そう言って、サンゴはぎゅっと彼の手を握り直した。
「はい!」
それから、8分くらいの駅までの道。深夜でもまだ少し明るいネオン街で、サンゴは手を繋ぎながら、リュウジにしっかり寄り添って歩いた。彼の肩や手をゆっくりと撫でて、気持ちを落ち着かせてあげたいくらいの気分だった。何度も彼の顔を覗き見ると、少しずつ血色が良くなってきたので、少しホッとする。
「ほーんとかっわいいやつめ!!幽霊まで怖いなんて……」
そう言いながら、思わず彼のほっぺたを人差し指で突いた。プニプニのツヤ玉ができる若い肌が可愛らしい。
「サン先輩だって、本当に見たらめっちゃ怖いと思いますけど?」
「見たことあるの?」
「ないですけど……」
「ないんじゃん!!」
「俺、なぜか夢で怖いのめっちゃ見るんですよ!」
「そーなのー?」
「金縛りにもあうし……だからほんと苦手で」
「私がいるから大丈夫だよ!!」
「ふふふ。確かに。サン先輩の明るさじゃ、悪いもの吹き飛ばされそうですもんね」
「そーだよそーだよ!!吹き飛ばしてあげるよ。幽霊も金縛りも」
「ははは!頼もしいです」
可愛い妹みたいなリュウジを守れたことも、終電に間に合わせられたことも。彼が大変な思いをしてしまう日があるなんて可哀想で心配だけど。それでも、こうやって一緒に笑い合って帰れることが、なんだかおかしいような誇らしいような気分だった。
コメント
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第5話、読み終えたよ〜!😭💕 サンゴが飲み会帰りに会社の明かりを見つけてリュウくんのとこ行く流れ、まじで胸きゅんポイント多すぎた!! 暗闇で怖がるリュウくんが「手離さないで」って必死にサンゴにすがるの、ギャップ萌えが止まらなかった… しかも鳥目で幽霊怖いって新しい一面も見えて、一気に推しキャラ度上がったわ。 サンゴが「私がいるから大丈夫」って明るく守る感じも最高に尊い…!! 次の話も楽しみにしてるよ〜🌸