テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
比喩的な意味での「殺される」であれば、さまざまな解釈が可能だ。
例えば、僕のアイデンティティであるこの癖毛、これがなくなるとなれば僕は個性の消失が起きてしまうだろう。
つまり死である。
「…..殺されるって…..何に?なんで?」
もうここまで来ると冷静である。
「お前、俺がこの部屋に入った瞬間見ちまったんだろ!?クソ!ちょっと待ってろ!!」
そういうと灰は部屋のカーテンを閉め、その場で何か始めた。
はい、待ちますとも、もう何にも驚きませんとも。
灰は、青い文字の書かれた手のひらより少し大きいほどの木の板をカーテンに押し当てた。
すると、すぐさま異様な光景が僕の部屋を包んだ。
押し当てられた木の板からエメラルドのような光が液体のように溢れ始めた。
床に落ちた光は2、3度柔く跳ねて空気に同化していく。
木の板はスライムのように自由に揺れ動き、灰の手から溢れていこうとしていた。
それを灰は両手で強くカーテンに押し当て続けていた。
まるで小宇宙が現れたように美しかった。
しばらく経つと光は落ち着き、灰の手からは木の板が消えていた。
よく見ると木の板に書いてあった文字は全てカーテンに移っている。
よく「私はこの目で見たものしか信じない」と言う人間がいるが、そのような人は今の光景を見て何を思うのだろうか。
「ふう、これで誘導はできるだろ」
「…………え……..何したの?」
「あ?誘導だよ、お前を殺そうとしている連中はこの窓からしか入って来れねぇ、奴らは元々玄関から入って来れないが、壁とかをぶち破って入っては来るからな」
そうだった、僕命狙われてるんだ。
「…………………..その、信じたくはないけど…..」
今のを見せられると、魔法とかそういった何かを使ってもおかしくない。
「………..僕は何をすればいいの?」
とりあえず、灰がこの部屋に入って来た瞬間を見てしまったがために僕は命を狙われるらしいと言うのはわかった。
後で詳しく聞こう。
それよりもさっきの大層な魔法?はよくある結界とかで守ってくれるものではないらしい。
「とりあえず逃げんだよ、逃げながらその後のことは話す。構えろよ、そろそろ来るぞ」
もう来るのかよ!!
僕は動揺して立ち上がった。
「もう来るのかよ!!」
「ああ、合図したら真っ直ぐ走れよ!落ちても大丈夫だからな!」
「はあ!?ちょっと待….!」
僕の言葉が終わる寸前、灰の手が僕の口を覆った。
(シッ!静かにしろ!)
部屋の周りを何かが歩く音が聞こえる。
カシャ、カシャ、カシャ
どことなく犬の歩く足音にも聞こえるが、金属が擦れ合う音や、黒板を爪で引っ掻く音、耳元で虫が飛ぶ音などのような不快感を感じる。
それも1つではない。
何かが複数僕の部屋の周りを歩いている。
しばらく経つと部屋には静寂が訪れていた。
ガラスの割れる音、カーテンが引き裂かれる音、数台の獣の唸り声が重なって部屋の隅々に響いた。
刹那、灰は隠していた刀を取り出して獣を切りつけた。
グゥゥゥ!
獣のうち一体がのけぞった。
すぐさま灰は飛び上がり、他の獣を切りつけ始めた。
僕の部屋に入って来た獣たちは半透明のステンドグラスの様な素材でできた狼の様だった。
しかし、狼というにはあまりにも大きく、四つん這いの状態でも僕と同じくらいの大きさがあった。
狼たちは数体が窓から落ち、残りは灰に切り刻まれた個体と、首だけになって吠えるのみとなった個体がいた。
「来い!!」
合図だ。
おかしい。
足が動かない。
早くしないと殺されてしまう。
灰だって無傷ではない。
動け!
早く!
なんで……なんで僕がこんな目にあうのか。
全て灰が悪いのに。
パン!!
頬を叩かれた。