今回のお話、ボケに突っ込みます。
次からちゃんと進んでく(多分)。
「中也と逢引に行ってきます!」
森に沈黙が生じる。
太宰は笑顔を保った儘、森を見た。
森は眉間を指で摘んで暫く考え込んだ後、何かに頷いて懐から携帯を取り出した。
「一寸待ってね太宰君。今紅葉君に相談するから……」
「冗談に決まってるじゃないですか、止めてください」
太宰が真顔で突っ込む。
「大丈夫、此方も冗談だから」苦笑しながら森は携帯を懐に戻した。「まぁ太宰君の考えなら追々何かに繋がるのだろう?佳いよ、許可しよう」
森の言葉に、太宰は笑みを浮かべる。
「でも本当に行くのかね?太宰君」
太宰から感情のこもった笑顔が消え、声が少し低くなった。
「……………………如何云う意味ですか?」
「だって君、」森は薄い笑みを浮かべながら、太宰に云った。
「今、体調が優れていないだろう?」
太宰は作り笑いを顔に浮かべるが、先程まで隠し通していた汗が頬を伝った。
「………流石、街医者の目はまだ顕在のようですね」
その言葉に、森は肯定の笑みを浮かべる。
太宰は笑顔を消した。
「ある程度なら太宰君の好きにしても佳いけど、無理しすぎないでね」
「____…」
太宰は笑顔を作る訳でもなく、何か言葉を発する訳でもなく、只々静かに首領執務室から出た。
***
「オイ、如何なってンだ此れ?」
そう云う中也は、呆然としながら辺りを見渡していた。
周りには明るい音と光を放ち、正に子供の好奇心を誘うように造られた遊具。
そしてその遊具に乗って楽しく遊ぶ者達の声が聞こえた。
そう────僕達が居る場所は遊園地である。
瞳に大きな観覧車が映る。
にやりと僕は笑みを浮かべた。
「よし中也!此処で遊び尽くそう!」
中也の手を掴み、走り出す。
「オイ待て!まだ仕事途中のがあるンだ!」
「それくらい部下にやらせれば佳いだろう?ほら直ぐ其処に───────バシッ!!
中也が僕の手を振り払った。
「手前と遊ンでる暇なンてねェンだよ……」
ひどく冷たい、突き放すような声色で、中也は僕に云った。
沈黙が生じると、中也は僕に背を向けて歩き出す。
「………………はぁ、判った」僕の言葉に、中也が足を止めて顔を向けた。「中也がそう云うのなら、此方も全力で行こう」
僕はズボンのポケットから“或るモノ”を取り出した。
黒い四角の物体の上に浮き出る赤い丸───スイッチを、僕は中也に見せる。
「何だソレ」
「スイッチだよ?」
「はぁ……?」
スイッチからは、ずっしりとした重みが伝わった。
「そう云えば昨日、中也の家から出る時“在る場所”の奥にワインセラーがあるのを見つけたなぁ〜」
僕は態と中也に聞こえるような棒読みな声で云う。
「はァッッッ!!!!??」
中也の表情が一気に変わった。
「因みに好奇心でちょちょ〜いっと、嫌がらせを仕掛けたのだった☆」
「手前っ……!どンだけ屑なンだよっ!!」
「何とでも。────それで?如何するの?」
中也の目の前に、スイッチをちらちらと動かす。警戒するような目で、中也はスイッチを目で追った。
「因みに重力を使ってスイッチを破壊しようとしても、その前に僕がスイッチを押して中也の大事な大事なワインを爆破。かと云って僕諸共潰そうとしても、停戦中の規約に反したと見做され組織を追われる………」
じりじりと僕が近付き、それと同時に中也も青ざめた顔で後ろに下がる。
「ふふ……因みに僕が推してるのは後者だ。組織を追われる中也────見てみたいものだねぇ、きっと素敵だ」
「一回手前が地獄に落ちる事を俺は願うぜ」
「それを云うなら中也もでしょ。それで?解答は?お・に・い・ちゃ・ん?」
「くっそ………」中也は歯を噛み締め、拳を強く握りしめた。
そして──────。
ガクンっと中也が膝をつく。
「ぁ………遊び尽くすぞ、治」
絞り出したような声で中也は云った。
「ふふっ、そうこなくっちゃ」
***
「中也!彼処にメリーゴーランドがある!乗ろうっ!」
キラキラと輝きを放ち、子供たちの喜ぶ声がメリーゴーランドから聞こえる。
僕は中也の手を引っ張りながら、指を指して云った。
「中身二十二歳が何云ってンだっ!!手前には羞恥心っつうもンはねェのかよ!」
中也が引き返そうと全力の力を入れる。
「何を云っているんだい中也、僕は十歳だ!」
「年齢詐欺野郎が!俺を巻き込むンじゃねェ!!」
「僕はまだ一人で乗れない(年齢)のだよ!中也も乗り給えっ!!」
「断固拒否!!!!!」
「くっ……」中也から手を離す。
これ以上は埒が明かないな……。
はぁ……仕方ない。
僕はポケットから、れいのスイッチを取り出した。
「中也!君にはコレが見えないのかい!」
「なっ…!手前っ、それは!!」
「僕が少し指に力を入れるだけで君のワインは吹っ飛ぶ!此方には人質(中也のワイン)がいるのだよ!」
「治手前…!後で憶えていやがれぇぇええええ!!!!」
*傍から見たら只単に兄弟の微笑ましい喧嘩。
「付添の方とお乗りになりますか?」
「はぁ〜い!」
「……………………………………………はい」
結果───────乗った。
***
メリーゴーランドの白馬に跨(マタガ)る。付添い人として、僕の後ろに中也が乗った。
廻り始めると同時に、馬が動き振動が伝わってくる。
(凄い、揺れてるっ……!)
正直、いくら玩具でも馬に中也と一緒に乗るのは苦痛と恥でしかないが、此処は遊園地。
そして周りには我が子を撮る為にスタンバイする両親。
前と後ろの別の白馬に乗る子供達をその両親は撮るが、別の意味で云えば中也はその人間達に見られる、と云う訳だ。
けれど僕の見た目は十歳。
詰まりメリーゴーランドに乗っていても、視線を気にしなくて佳い年頃。
然し中也は違う。
いくら身長が低いと云えど、メリーゴーランドに乗るのは中也自身が苦痛だろう。
だからこそ、僕は此処にきた。
恥らいと云う嫌がらせを中也にする為に。
↑此処まで約0.1秒
僕は顔を中也に向ける。
「ほら中也!揺れてるよっ!」
さぁて、一体どんな表情を─────
「俺は幹部だ。俺は幹部だ。俺は幹部だ。俺は幹部だ。俺は幹部」
俺は幹部。─────中也は真顔で其の言葉を呪文のように唱えて───否、自分に云い聞かせていた。
「ぶはっ!///」
思わず吹き出す。
遊具の把手を必死の思いで掴みながら、僕は爆笑した。
「ちょっ……中也っ///w、待ってお腹痛いっww」
物凄い雰囲気を纏いながら、中也は続ける。
「俺は幹部。俺は幹部。俺は幹部。俺は」
「ひーっ//ww止めてよ中也ぁ///www」
「俺は幹部。俺は幹部。俺は幹部。俺は幹」
「ほんとに無理っ///www腹筋死ぬってぇ//////wwwwwww」
※メリーゴーランドが終わるまで此の地獄が続いた。
結果的には中也に好い嫌がらせができたけど、僕の腹筋が死んだ所為で廻るのが止まっても降りられなかった。(ある意味中也も)
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