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ーー二人は息を整えながら、崩れかけた教会の奥から外の月明かりに向かって歩いた。
血と埃にまみれた服。擦り傷だらけの体。だが、胸の奥には妙な充実感があった。
「……はぁ、もう夏の夜にこれ以上の運動は要らねー、」
ルイズは苦笑いを浮かべながら、膝を押さえる。
「せやな。お前、思ったより元気やったやん」
ロディも肩で息をしながら笑った。
互いに笑い合う声は、夜の静寂に溶け込み、戦いの緊張をふっと和らげる。
月明かりに照らされる教会の廃墟は、少しだけ優しく見えた。
瓦礫や割れた窓、崩れた壁。すべてが、戦いの痕を残しながらも、二人を包み込むようだった。
「……なぁ、ロディ」
ルイズがぽつりと口を開く。
「ん?」
「なんで、お前……あんな時、俺を守ったんだよ。」
傷だらけの体を押さえつつ、ルイズは真剣な目でロディを見た。
ロディは少し目を伏せ、笑みを浮かべた。
それはいつもの優しさとは違う、だけどどこか安心できる笑みだった。
「……そら、俺やからやろ。ルイズが、危なかったら――守らなあかんやん」
ルイズはその言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。
言葉に出さないけれど、互いに分かっている――ここで逃げたり裏切ったりすることは、もうない。
二人は少しの間、手をつないだまま歩いた。
傷だらけで、泥だらけで、笑いながら――それでも、夏の夜は二人に静かな希望を与えてくれていた。
教会に戻った二人は、崩れた祭壇の前で肩を寄せ合い、静かに笑った。
互いの存在を確かめるように。
そして、夜風に混ざる不穏な気配を、どこか遠くに感じながらも――