夜が明けた。 廃教会の天井から差し込む朝の光は弱々しく、埃を含んだ冷たい空気を照らしていた。
ルイズは硬い床の上で寝返りを打ち、痛む体に眉をしかめた。
「……いってぇ……昨日の戦闘、マジで体に残ってるわ……くそ…」
横を見ると、ロディは壊れた長椅子にもたれかかって眠っていた。包帯も巻かず傷だらけのままなのに、穏やかな寝顔をしている。
――守らなあかんやん。
昨夜の言葉が脳裏によみがえる。胸の奥がまた少しだけ熱くなった。ルイズは無意識に胸を押さえる。
「……なんだよ。調子狂うわ、あいつ」
その時――ギィ……と、廃教会の古びた扉が音を立てた。
瞬間、ルイズの表情が鋭く変わる。体は傷だらけでも、反射は鈍っていない。無言で立ち上がり、瓦礫の影に身を隠した。
朝の静寂を破って入ってきたのは、フードを深く被った人物だった。足取りは静か。殺気は――ない。だが、油断はできない。
ロディを起こすべきか、一瞬だけ迷う。しかし、間に合わない。
フードの人物は、まっすぐロディの方へ歩いていく――!
(まずい――!)
ルイズは床に落ちていた鉄パイプを拾い、迷いなく飛び出した。
「――止まれッ!!」
鋭い声が、朝の冷たい空気を切り裂く。
フードの人物はゆっくりと振り返り――その顔を見た瞬間、ルイズは息をのんだ。
「……おまえ……」
その人物は静かにフードを外す。血のように赤い髪。夜の闇を思わせる冷たい瞳。
「――久しぶりー!ルイズくーん!。生きてたー??笑」
皮肉めいた笑みを浮かべながら、そいつは言った。
――ラグ。
ルイズの過去を知る正体不明の人物。ロディの知らない、「ルイズの闇」を知る存在。
廃教会に、新たな緊張が生まれた。
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