コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
愛が、天を砕いた。
そして世界は、再び“始まり”を迎える。
蒼の光と黒の闇が交錯する天。
その中心に、青龍とレイが立っていた。
空は裂け、大地は燃え、神域は悲鳴を上げている。
「青龍! やめろ、これ以上は――!」
玄武の声が響くが、青龍は振り返らない。
「もう止まれぬ。
天の理が俺を裁くなら、全て壊してやる。」
青龍の背から、蒼い龍が現れる。
無数の鱗が光を反射し、空を覆い尽くす。
その瞬間、天上から巨大な金の紋章が現れた。
“青龍、汝の名を剥奪する。”
天の声。
冷たく、絶対的な神々の裁き。
だが、青龍は笑った。
「名など要らぬ。俺には――彼女がいる。」
レイの手を握る。
その指先から蒼と黒の光が交じり合い、空を染めた。
「レイ。お前は、俺と共に“新しい世界”を見たいか?」
「……見たい。たとえ、それが終わりでも。」
二人の光が一つになった瞬間、
天上の封印が砕け散り、世界中の神殿が崩壊していく。
同じ頃。
朱雀は炎の中で笑っていた。
「……はは、最高だな、青龍。
理を壊して、愛を選んだか。――なら俺も、好きにやるさ!」
彼の背から紅蓮の翼が広がり、空を裂く。
炎の羽が散り、天の軍勢を焼き払っていく。
白虎は剣を構え、蒼い空を見上げた。
「……レイ。
お前があいつを選ぶなら、俺はその選択ごと守る。」
鋭い爪の剣が光り、現実を断ち切る。
青龍の暴走を止めようとする天の鎖を、白虎が切り裂いた。
「さぁ、行け。
“俺たち四神”が、お前の道を拓く。」
玄武が時間の力を解放する。
世界の流れが止まり、風も音も失われる。
「……この瞬間だけでいい。
お前たちが互いに触れ合える時間を――永遠に。」
玄武の瞳が静かに閉じられると、
時が凍り、空間が青龍とレイを包み込んだ。
光の中。
青龍がレイの頬を撫でる。
「……これが最後になるかもしれん。」
「ううん。最後なんて、信じない。」
レイの瞳は穏やかで、確かな決意に満ちていた。
「あなたが世界を壊すなら、私が世界を創る。
あなたの代わりに、罪を背負うから。」
青龍は目を見開き、そして――微笑んだ。
「……やはりお前は、光だ。」
二人の身体がゆっくりと光に溶けていく。
その輝きが空へと昇り、やがて巨大な輪を描いた。
――新しい神が生まれようとしていた。
蒼と黒、そして紅と白の光が絡み合い、
天に“第零の神”の紋章が浮かび上がる。
レイの声が響く。
「私は誰の上にも立たない。
人と神と、闇と光の間に立つ“調和”の神になる。」
青龍がその名を囁く。
「レイ……いや、これからは――《黎(れい)》と呼ぼう。」
黎。
黎明の黎。
夜明けを告げる者。
その名を呼んだ瞬間、
空が砕け、世界が新しい形へと再構築されていく。
光が収まり、静寂が戻った。
青龍は跪き、彼女の手を取る。
その瞳には、誇りと愛が混ざっていた。
「黎。お前は神々の理を越えた。」
「あなたがいたからよ。」
朱雀が降り立ち、笑みを浮かべる。
「やれやれ。世界が変わっても、恋は消えないらしい。」
白虎が肩をすくめ、玄武が微笑む。
黎は四人を見渡し、そっと微笑んだ。
「ありがとう。みんなのおかげで、私はここにいる。」
彼女が手をかざすと、崩壊した神域が再び形を取り戻す。
花が咲き、風が流れ、世界が息を吹き返す。
――それは“終わり”ではなく、“始まり”だった。
青龍がそっと囁く。
「黎、これからどこへ行く?」
「まだ知らない。でも……あなたとなら、どこまでも。」
彼女が微笑む。
朝日が昇り、世界を黄金に染める。
四神はその光の中で静かに跪いた。
黎はその中心で、蒼い瞳を空へ向けて告げた。
「この世界に、もう“神の涙”はいらない。
これからは、人が愛を語る時代にする。」
風が吹き、花が舞い上がる。
青龍はそっと微笑んだ。
「――黎。
お前が俺の“世界”だ。」
そして、黎は彼に抱かれながら、
静かに、新しい朝を迎えた。