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第31話 祐の過去1/2
前回までのあらすじ
シイの過去を辿った。以上。
*注意*ここから下は完全に祐視点になります。
これは、俺が小学2年の頃の話だ。
いつだったかな?覚えてもいないや。まぁいいか。その日の俺は、電車に乗って家族旅行に行っていた。
「ねぇお母さん、お腹すいたぁ」
「もうすぐつくからね」
「それ5回めくらいじゃない?」
家族は僕、妹、母、父だ。この4人家族は周りから見ても幸せだと言われるくらいだった。…。あの事件が起こるまでは。
(ガタッ
突然、目の前の黒いフードを被った男が立ち上がった。駅に着いていないのに、なんでだろう?
その手には、ナイフがあった。恐らくサバイバルナイフだろう。折りたたみ式だがあれはよく切れるやつだ。
「ちょっと、祐!早く逃げるよ!」
「う、うん」
相手の事を分析しすぎて少し逃げ遅れてしまった。とりあえず、早く逃げなくては。
しかし、他の乗客が別の車両に逃げて、扉を開けようとしない。
「ちょっと!開けて!せめて子供たちだけでも!」
お母さんは必死に言った。しかし、乗客は目を背けるだけで首を縦に振らない。扉を閉める力も緩めない。
お母さんは絶望で涙を流していた。父はナイフを持った男と戦っていた。だが、やはりと言うかなんと言うか、負けてしまった。つまり…死んだ。
背中に何個もの穴が空いている。そこから出てきたのはケチャップよりも濃く、黒い血だった。
恐らく次は僕らを狙うだろう。
「ちょっと!早く開けて!子供たち…子供たちだけでも!本当に…お願い…」
お母さんの声は少しずつ弱くなっていく。それは恐怖なのか、はたまた涙なのか。僕には分からなかった。
そして、お母さんは僕と妹を抱え込む形で守った。
ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ
聞きたくもない音、声、全てが嫌という程に僕たちの脳に染み渡る。やがて、その音は止んだ。絶叫も、妹だけになった。手が暖かく、温もりを感じる。コレは妹の暖かさなのか、それとも母の温かさなのかは分からない。叫び声すら出ないほどに僕の心はズタズタだった。
そして、男は冷たくなったお母さんを投げ飛ばし、僕たちのことを黒く、深い目で見つめる。
最初は妹が刺された。馬乗りになり、ナイフを刺す。その音はお母さんの時よりも早く止んだ。
僕は最後のチャンスだと思い、扉を叩いた。
「開けて!お願い!」
僕は何度も頼んだ。しかし、後ろから男に掴まれる。妹と同じように馬乗りにされる。そして、腹部を何回も刺す。最後に聞こえた言葉は、耳を疑いたくなる言葉だった。
「ねぇ、これ開けなくてよかったの?」
「こんなこと滅多にねぇな。動画撮ろ」
「開けなくて良かったんだよ。犠牲者があの4人ですんで良かったな。もし開けてこっちに来たらたまったもんじゃねぇからな」
「あいつらが逃げ遅れたのも、全部子供が悪いよな」
「そうそう。子供なんか連れてるから死ぬんだよ」
僕は、その言葉を聞いて、怒りと悲しみと絶望の中、死んで行った。
※作者は子供を産むことを否定している訳ではありません。決して。逆に少子高齢化を止めて欲しいと願っている方です。この上のやつを見て気分が悪くなってしまったら深く、お詫び申し上げます。