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放課後の体育館。練習を終えて片づけをしていた治のもとに、侑がキラッキラの笑顔で近づいてきた。
侑「なあ、治!今日ハロウィンやん?せっかくやし、みんなでハロウィンパーティーしよや!」
治「楽しそうやけど、北さんがやってくれるとは思わ…」
治の言葉を聞く前に侑が北さーん!と言いながら走り出す。
治「ちょ、人の話聞けや!アホツム!」
⸻
体育館は練習の騒がしさとは違う、別の騒がしさに包まれていた。
北「ほな、楽しもうか」
そう言い出したのは、マントをひるがえしたドラキュラ・北信介。
口元には赤い血糊、首には銀の十字架。
「似合いすぎやろ……」と誰もが思った。
?「北、めっちゃ様になっとるやん」
次に言葉を発したのは、包帯ぐるぐる巻きのミイラ・アラン。
そんなアランを見て北が笑う。
北「めっちゃ似合っとるやん」
アラン「笑うなや!これ、動くのめっちゃ大変やねん!」
?「そう言う割には結構ノリノリやないですか」
ふわふわの白シーツをかぶって登場したのは、おばけ・銀島。
「なんか地味やけど、銀、可愛ええやん」とアランが笑えば、
「地味って褒めてますか?」とシーツの中から苦笑が返る。
その横から、額にお札を貼ったキョンシー・角名がぴょんぴょんと跳ねながら入ってくる。
銀島「角名、跳ね方リアルやな」
角名「練習した」
「そういうことは自主的に練習するんやな」
とアランがツッコむ
?「……誰が決めたんや、これ」
?「俺♡」
?「センス無さすぎるやろ」
?「はぁ?!めっちゃかっこええやんか!」
いつものように喧嘩して来たのが、狼耳と尻尾をつけた宮兄弟・狼男コンビ。
「うわ、なんやその格好……!」
アランが吹き出す。
「ええやろ!? 兄弟狼やで!」と侑がポーズを決める。
侑「治、お前もなんかポーズしてや!」
ため息をついてからポーズをする治。
だが、治は両手を差し出しただけの地味なポーズだ。
侑「なんやねん。そのポーズ」
治「トリックオアトリート。お菓子以外許さへんで」
侑「お菓子ねだってるときのポーズかい!どんだけ食い意地張ってんねん!」
笑い声が弾け、チョコやクッキーの甘い匂いが辺りを包む。
北はトマトジュースを飲みながら言った。
北「こういうんも、たまにはええな」
侑「そうっすね!来年もやりましょう!みんなで集まって!」
治「ええけど次は俺が仮装決める」
侑「え〜! 絶対地味なん選ぶやん!」
治「狼よりマシや」
侑「なんでや、かっこええやろ!」
北は、そんな2人を見て笑う。
北「せやな。また来年、集まろや」
アラン「俺は来年のお前らが心配で堪らんわ」
侑「アランくん、何が心配なん?俺が部長になるさかい、心配せんと!」
治「それが一番心配やわ」
侑「治に言うてへんわ!」
アランはそのやり取りに更に心配になり北を見る。北は腕を組んで2人の会話を聞いているだけだ。だが、アランはその様子に何故か安心感を覚えた。
窓の外には、月が丸く浮かんでいた。
誰かの笑い声、誰かの悪戯、そして兄弟のじゃれ合い。
全部が、かけがえのない思い出となり、稲荷崎の夜は暖かく更けていった。