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サイド ??
キキッィィィッと甲高いブレーキ音が耳に入った。
ここは危険だと、自分の本能が叫ぶ。
咄嗟に私はシートベルトを外して開けていた窓から飛び出す。コンクリートの上に体を強く打ち付けた。
痛い、痛い痛い。
それでも無理矢理立ち上がった。
目に入ったのは、先程まで乗っていた私の家の車が赤々とした火柱を上げて燃えている様子だった。
嘘、あそこには、まだ、お父さんとお母さんがいるはずなのに…………。
「ああ、ぅああああああっっ!!」
どうして、どうして!!
柔道の試合で殴られたときより、強く打ち付けた体より、胸が痛い。
こうして私の当たり前、日常、普通は全て奪い取られた。
二度と戻らない、脆くて儚いものは、失ってから気付く。
事故を起こした犯人は、スピードを落とすことなく消え去った。
周りの野次馬は写真や動画を撮るばかりで、救急車や警察を呼ぼうともしない。
……このクソのような世界で、私は一人で生きていくしかないの?
なら、強くなってやる。
強くなって、犯人を見つけて復讐してやる。
それができるなら、私はもう何も望まない。
犯罪者に鉄槌を。
その思いを胸に、私は燃え続ける車だったものを見つめていた。
サイド キノ
「事故、あったのかな?」
キリはそう呟いてぼろぼろの青い服を着た女の人を見る。
「犯人の目撃情報、探しています。ご協力ください……!」
そう言って紙を配るその人は目に強い光を灯している。
「俺らも手伝おうぜ!」
「えっ?あ、ちょっと!」
キリが止めるのも聞かず、俺はその人の方へ走り出した。
何もしないなんて、できねぇ!
「協力するぜ!!」
「?!もしかして、何か見たの?」
「いや、何も見てねぇけど」
「はぁ?!」
あからさまにその人は表情を変えた。
「悪いけど、こっちは本気で捜査してんの!冷やかしなら帰ってくれる?子供の遊びに付き合ってられないの」
子供?!
「俺は!これでも!中三だっ!!」
ビシッと俺は自分の胸を指差す。
なんだか知らねーけど、こいつ、嫌いだっ!!
「……似たもの同士?」
キリがボソリと何か言う。
聞こえなかったことにしとくか。