コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
飯豊は見回りから帰ってくると、天羽組ヤクザ事務所のドアをゆっくりと開けた。
しかしその瞬間、彼は耳を疑うほどの光景に驚いた。
小林が小峠を襲っているのだ。
小林の手は小峠の首筋に掴みかかり、彼を押し倒している。
小峠は悲鳴を上げ、必死に抵抗しているが、小林の力には及ばない。
小峠の服は乱れ、肌が露出している。
さらに、小峠の首元には赤いキスマークがくっきりとついているのが見える。
飯豊の心は激しく揺れ動き、怒りと不信感で満たされていく。
激情にかられた飯豊は声を荒げて叫んだ。
「てめえ、俺の華太に手を出してんじゃねえぞ!」
小林は飯豊の怒りに応えるように冷酷なまなざしで彼を見つめた。
それまで飯豊が尊敬してきた存在が、今は敵意に満ちた姿となっていた。
飯豊もまた、眼光鋭く小林を睨み返した。
二人の間には凍りついた空気が立ち込め、まるで取っ組み合いの瞬間が迫っているかのようだった。
小林は低い声で飯豊に反論した。
「お前、生意気だな。殴ってやろうか?」
その声に、小峠は恐怖を抱えて焦り始めた。
彼は二人の争いを止めようと必死になるが、小林と飯豊の興奮は沸点に達していた。
飯豊は覚悟を決め、小林に向かって言葉を放った。
「殴ってください。俺を思い切り殴ってください。どれだけ殴っても構いません。ただ一つだけ約束してください。俺の華太には絶対に手を出さないでください。それだけはお願いです。」
彼の言葉には怒りと悲しみが混ざり合っていた。
しかし、小林は何かを悟ったかのような表情で言い放った。
「もう飽きたから、ヤニ行ってくる。」
そして彼は部屋を出て行ってしまった。
小峠と飯豊は呆然とした表情を浮かべ、二人きりに取り残された場所で戸惑いと疑問に満ちたまま立ちつくしていた。
何が起こったのか、なぜ小林が華太に手を出したのか、彼らには理解できぬままに終わってしまった。
飯豊は小峠に駆け寄り、小峠の開いたワイシャツのボタンを締めた。
小峠はうつむいていて、涙を浮かべていた。飯豊は小峠の顔を見つめ、ハンカチを取り出して小峠の涙を拭き取った。
その時、飯豊は震える華太を見て、小林を疎ましく思った。
飯豊は小峠に優しく言った。
「大丈夫だった?」と。
小峠はうなずきながら、
「大丈夫だけど、いつもみたいに『小峠の兄貴』じゃなくて『華太』って呼ばれて嬉しすぎて死にそう。」と言った。
飯豊は顔を赤くさせながら、
「だって、あんたのことが好きだから。」と言った。
小峠は飯豊に初めて「好きだ」と言われて、嬉しくなった。
今まで飯豊に好きだと言われなかったから、体だけの関係だと思っていた。
小峠は今まで飯豊に言った。
「何で今まで好きって言ってくれなかったんだ?俺は不安だったんだぞ。」
飯豊は胸が痛くなり、喜びと共に何かを思い出した。
悔しさも忍び寄り、飯豊は告白する日も場所も花束もすべて準備していたことを思い出した。
飯豊は申し訳無さそうに言った。
「待たせてごめん。俺、ちゃんと準備してた。華太に好きだって告白する準備してたから。いい場所で、いい雰囲気で告白したかった。」
しかし、今回の出来事でそれが台無しになってしまったことを悔しがり、歯を食いしばりながら涙を流した。
飯豊はうつむき、小峠は呆れつつ微笑んだ。
「じゃあ、もう一度告白してほしい。」
飯豊は驚き、顔を上げて小峠の顔を見つめた。
すると、飯豊は小峠の言葉に驚き、顔を上げて小峠の顔を見つめた。
小峠は飯豊を抱き寄せ、優しく言った。
「良い場所で、良い雰囲気で、もう一度好きだと言ってほしい。」
飯豊は少し戸惑いつつも、小峠の真剣な表情に心が揺れ動いた。
彼は小峠の腕を拘束し、押し倒すと、
「あんたは俺を煽る天才だ。」と言った。
そして、二人はキスをした。
その一瞬、彼らの心は一つになり、過去の出来事や未来の不安が一時的に忘れられた。
彼らの熱いキスは、飯豊が小峠に対して抱いていた深い愛情の表れであり、小峠も同じように飯豊への愛を感じていた。
キスが終わった後、二人は息を荒げてお互いの目を見つめた。
小峠は微笑みながら言った。
「もう一度言ってほしい。好きだと。」
飯豊はしばらく絶句していたが、その後、彼の顔には幸せな表情が浮かんだ。
「好きだ。本当に好きだ。」
彼は小峠の手を取り、固く握りしめた。
二人はその場でぎゅっと抱き合うと、過去の不安や疑問、そして彼らを引き裂いた小林の存在も、少しは薄れていくように感じられた。
彼らは互いの愛に支えられながら、未来へと歩んでいく決意をしたのだった。
終わり
ご清聴ありがとうございました。
このお話では、何度も飯豊くんが小峠の兄貴に「可愛い」と言っている描写がありますが、それは「好き」と言うことを我慢しているんです。
タイトルの「飯豊くんは焦らしたい」は、小峠の兄貴に「好き」と伝えることを焦らしたいという意味が込められているということです。
そして、小峠の兄貴に振られてしまった小林の兄貴ですが、このままでは悲しいですよね?