別れの一杯

「別れよう」俺がそう告げると彼女はただ一言「わかったわ」とうなずいた。

おとなしく言うことに従うだけのつまらない女だ。

「……最後に一杯カクテルを作らせて、あなたのために」

「…どう……美味しい？」

「味も香りも素っ気ねぇがとりあえず酔えるならかまわんさ」

(まさにこの女みたいな酒だ)

「貴方って本当……お酒に目がないわね」

（しかもバカだ“お酒に目が無い”だろうに）

解説

飲用アルコールは「エチルアルコール」、

工業用アルコールは「メチルアルコール」。

エチル、メチルはどちらも化学物質の特徴を表す言葉だが、メチルアルコールは古くから「目、散る」と語呂合わせされてきた、猛毒である。

無味無臭で安価だがわずかな量で人を死にいたらしめ、助かっても失明などの重大なダメージを与える。

最後のカクテルに使われたのはもしかして…？

彼女はおとなしくもバカではないのこもしれたない。