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闇系尊い…はぁスコ
とある方の病みモブくん小説に感化され書いてみようと思いました…
駄文ですが暖かい目でお願いします。
不穏
暗い部屋でひたすらに剃刀を走らせる。
手首から零れ落ちる血は光を反射しキラキラと輝いていた。
しゅっ、しゅっ。
外の鳥の囀りさえ聞こえぬ程虚ろになり、意味もなく手首へ傷を付ける。
勿論階段を登る足音にも気付けず、茂夫は自分の弱みを弟に晒す事となってしまった。
「兄さん、入るよ…」
意味を成さないノックをし、言い終わらない内にドアを開ける。
そこにいたのは壁に背を預けひたすらに手首を傷付ける兄の姿だった。
「なっ、…にしてるの」
戸惑いながらも声を掛ければ、はっと顔をあげて此方を振り向く。
「…りつ」
振り向いた兄の顔はこれ以上涙が出ないとでも言う程目は腫れ、口許は歪んでいた。
いてもたっても居られず、一度自室に戻り救急箱を手に戻る。
「…手当て、しよう?」
ぽかんと此方を見詰める兄に優しく微笑み、一度抱き締めてから救急箱の蓋を開ける。
薬品などのツンとした匂いが鼻を刺し、顔を歪めながらも包帯と消毒液を箱から取り出し茂夫の腕を優しく掴む。
「りつ、いいよ。大丈夫…」
はっとしたように手当てを拒否し始める茂夫を上目遣いで見上げ、優しく諭す。
「駄目だよ。僕は兄さんが辛い思いをしてるのを放っておけないよ。だから…ね。」
そう言えば渋々納得し素直に手を差し出す。
律はこの状況に内心興奮していた。
(兄さんの弱み…僕だけが知ってる…)
思わず上がる口角を鎮めるようにひたすらに包帯を巻く。
無事手当ても終わり、ふぅ。と息を吐いたと同時に茂夫が口を開いた。
「…ごめんね。こんな汚い腕見せちゃって。それに手当てまで…」
俯き拳を握り締めて自己嫌悪に浸る茂夫を抱き締め、律は口を開いた。
「兄さん。僕にはなんでも言っていいんだよ!僕はどんな兄さんだって大好きだから。さっきだって吃驚はしたけど、なんとも思ってないからね」
律は腕の中で震える茂夫を一度離し、額にちゅっと口付ける。
そうすれば茂夫は落ち着いたのか向かい合う形で眠ってしまった。
律は一度畳まれたふかふかの布団をもう一度敷き直し、そっと茂夫を寝かせた。
息をしているのかしていないのか見分けがつかないほど息は浅く、耳を極限まで近付けないと確認できないほどであった。
(…よし、生きてる)
ほぅ、と一息ついてから自分も一眠りしようと自室へ戻ろうとする。
しかし、それは叶わなかった。
「…つ、いかな…で」
眠っていたはずの茂夫が薄ら目を開け、律を見詰めて手を伸ばしていた。
律は歪む口許に手を持っていき、顔を見られないようにしてから微笑んだ。
「うん。毛布取ってくるから待っててね」
パタリと閉じるドアに虚ろな目を向け、様々な感情に胸が支配される。
(見られちゃったんだよね。弟に…お兄ちゃんが”こんなこと”してるなんてショックだよね…)
「…しにたい。しにたい…しにたいよ」
もう跡になった腕の傷をなぞりながら口癖になった言葉を何度も繰り返す。
その時、ふわふわの毛布を持った律が心配したような顔をドアから覗かせた。
「兄さん。兄さんが死んじゃったら僕も逝くよ」
思わず揺れる肩を誤魔化すように問い掛ける。
「…どうして。」
「うん?」
「どうして律はこんな僕の為にそこまで言えるの…」
嬉しさと自己嫌悪で枯れたはずの涙が目を潤す。
涙を見られたくなくて俯き、布団へ雫を落とす。
律はくすりと笑い、落ち着いて此方へ歩いた。
「…それはね、僕が兄さんの事を本気で愛してるからだよ」
それは茂夫が今までで1番待ち侘びていた言葉だった。
涙を見られることなどどうでも良くなり、茂夫は立ち上がって律へ近付く。
「それ、ほんとう?」
律は毛布をその場へ置き、茂夫を力強く抱き締めた。
「うん、本当。家族としてじゃなくて、一人の人として兄さんを愛してるよ。」
長く強い抱擁を交わした後、律は茂夫の肩に手を置いて少し引き離した。
「兄さん。僕と付き合ってくれる?幸せにするよ」
真剣な眼差しで目を見詰める。
「うん。こんな…っ僕でも…!いいっ、なら」
いつの間にか開けられたカーテンから差し込む光で茂夫の涙がとても美しく輝いた。
「ねぇ、律。僕っ、きっと自傷行為、辞めれないよ?それでも…本当にいいのっ?」
律は幸せそうに笑い、歪に歪む口許を開いた。
「勿論。僕が手当てもするし、必要なら僕が兄さんのお世話もするよ。どう?僕の本気さ、信じてくれた?」
茂夫はこくこくと頷き、律の頬に唇を押し付けた。
「……っ?!?!に、兄さんっ!はわ…どこでそんなこと覚えたの?!」
慌てる律を他所に、茂夫は幸せそうに笑った。
「ふふふ、!!」
(…僕には律しかいないし、本当は律にも僕しかいないんだよね。死ぬ時は一緒だよ。律♡)