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コメント
4件
最高です〜!設定がすごくいいですね!これからどうなるのかな、、気になる!!
あれからというもの、週3くらいは通っている。
トリミング、診察、カウンセリング。
あの店員さんじゃないこともあるけど、高確率であの店員さんだ。
佐久間くんによると、あそこは指名制だということ。
俺も指名したいけど、名前を知らない。
なんて名前なんだろ、ってあの店員さんを見ていたら、目が合う。
ガラス越しにモコちゃんのトリミングをしている。
ちょっと驚いたような顔をした後、笑いかけてくれる。
仕事中にその笑顔を思い出すと、頑張れる。
写真にして持っておきたいけど、それは無理だ。
熱愛が出てしまう、
そんな時、“オレンジKISS”の歌詞が思い浮かんだ。
「辛い時にはね、君を思い出すと がんばれてしまう」
こういうことか、と思わず笑ってしまう。
じゃあこの気持ちは恋なのか、スキなのか。
……だめだ、
この気持ちに名前をつけた途端、これは許されない感情になる。
これが恋なら、許されない恋になる。
名前はつけない、何かの気持ち。
そういうことにしておこう、
店員「はい、シャンプー初めて使ったので、もし何かあったらすぐきてくださいね、!」
目「あ、はい、」
店員「では…」
目「あの、!」
目「名前、って…」
店員「望月、紗奈です、」
目「望月さん、?」
店員「紗奈でも、お好きなように」
目「紗奈さん、」
店員「…お客様の名前も、」
目「蓮です。」
名前をバラすとダメだ。
紗奈「蓮、さん。」
紗奈「では、行ってらっしゃい、蓮さん。」
今の行ってらっしゃいは、俺だけに向けられた気がして嬉しかった。
目「…いってきます、紗奈さん、」
いつか敬語やさん呼びが外れるのかな、なんて思っていた。
俺は診断書には嘘の名前を書いている。
村岡 蓮。
なかなか普通の名前。
だけど村岡さんとは呼んでほしくなかった。
俺のことを、呼んで欲しかった。
紗奈「今日はカウンセリングですね、心配なことはありますか?」
指名して、今日も紗奈だ。
目「僕自身のことでいいですか?」
紗奈「はい、どうぞ、!」
目「やっぱ最近、モコちゃんを預けることが増えてて、絆が薄まっちゃうんじゃないかなって…」
紗奈「ふふっ、笑」
目「えっ、なんか変なこと言いました、?」
紗奈「いえ、自分自身の話ってなんだろう、って思ってたらモコちゃんの話だったので…」
紗奈「すごくモコちゃんを大事にされてるんだな、って…」
なんか、そういうふうに言われて安心した。
ネットとかで、モコちゃんが可哀想 という声をよく見かけるから。
紗奈「大丈夫だと思いますよ、蓮さんが来た時、すごく尻尾を振るんです。」
目「ほんとですか、」
紗奈「はい、だから大丈夫だと思いますよ」
目「そうですか、ほっとしました。」
紗奈「では、以上になります。お足元お気をつけください。」
部屋を後にすると、入れ違いに特徴のある人がいた。
目「佐久間く…」
佐「シー、大介なの、」
目「大介くん、」
佐「蓮、後で話そ?外でちょっと待ってて、!」
外も暑かったので、中で待つことにした。
カウンセリング室からはずっと楽しそうな声が漏れていた。
佐「で、シャチが…」
紗奈「ふふっ、笑」
しかも、タメ語だった。
結構仲良いと思っていたけど、佐久間くんの方がだった。
佐「蓮、中で待ってたの?」
目「ごめん、暑くて…」
佐「確かに〜、全然いいよ〜!」
目「その、紗奈さん…」
佐「あぁ、そうだった、蓮、紗奈のこと好きなの?」
目「え…?」
好き、だけど、バラしちゃいけない。
だけど、…
佐「俺にはいいよ、俺も蓮にだけ話したから。もちろん秘密ね、?」
そういってシーという動作をする。
目「…好き、」
佐「そっかぁ、恋のキューピットなれないなぁ、ごめんね〜、」
目「いいよ、全然。ライバルでしょ?笑」
佐「そうだね〜、先輩vs後輩だねぇ〜、」
目「負けませんからね〜、」
佐「俺こそね〜、」
俺ははっきり自覚した。
俺は紗奈さんが好きなんだと、
そして、この恋は許されないんだと__
次 50♡