テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
村の奥、小さな木造の空き家。ここが、健と私の新しい暮らしの場所だった。
朝は鳥の声で目覚め、昼は一緒に畑を耕し、夜は囲炉裏の前で温かい食事を囲む。
そんな日々が、ずっと続くと信じていた。
けれど、その平穏はあまりにも脆かった。
ある晩、外で何かが軋む音がした。
『……風の音やろ』
健は笑ってそう言ったけれど、私の胸はざわついた。
戸口を開けると、松明の炎がいくつも揺れている。
【居ったぞ!化けオオカミや!】
突然、村人たちの怒声が夜を裂いた。
健はもう呪いが解けているはずなのに……
彼らはそれを知らない。
いや、知ろうともしなかった。
私たちは逃げようとしたが、すでに家は取り囲まれていた。
縄が健の腕を縛り、私も後ろ手に捕らえられる。
「やめて!健はもう……!」
必死に叫んでも、村人たちの耳には届かない。
《さっさと牢屋に連れて行け!》
村長の冷たい声が響く。
こうして、2人の幸せな日々は終わりを告げた。