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これは、僕の友達のA君が体験した話です。
四年程前の、まだ小学二年生だった頃。家族四人揃ってリビングで寛いでいた時、その電話はかかってきたのだそうです。
「こんにちは。黒猫ヤマトです。B様宛に、着払い十万円の荷物が届いています。今から配達に伺ってもよろしいでしょうか?」
四つ年上の兄の携帯に掛かって来たのは、全く身に覚えのないものでした。それはそうですよね。十万円もする買い物だなんて、小学六年生が簡単に購入できる金額ではありません。そして何より決定的だったのは、告げられた名前が全くの別人だったこと。
きっと間違い電話だろう。そう思ったA君の兄は、近くにいた母に電話を替わったのだそうです。
「すみません、うちはBではありません。番号間違えてますよ」
そう告げて事なきを得たのだそうですが、何故そんな間違い電話が掛かってきたのか。翌日になっても、少しばかり気にはなっていたのだそうです。
通常なら、ドライバーからの着信がある場合、それは携帯から掛かってくるはず。それだというのに、昨日掛かって来た着信は固定電話からだったのです。
それに気付いたA君の母は、昨日掛かって来た番号をネット上で検索してみたのだそうです。
「……えっ?」
携帯片手に固まってしまった母の姿を前に、A君をはじめ、その場にいた父や兄も皆、どうしたのかとその視線を母の元へと集めました。
「宅急便じゃない……」
昨日掛かって来た電話は、一年半前に潰れた工場からのものだったそうです。
そんな場所から、一体何を配達しようとしていたのでしょうか──。
─完─