佐久間からの、甘い“寸止め”という名の挑発。それに耐えながら、阿部はもうほとんど無心で、彼の体を丁寧に愛を込めてほぐし続けた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
佐久間の体はもう完全に、阿部を受け入れる準備ができていた。
阿部自身の我慢も、限界だった。
「…もう、限界…」
掠れた、獣のような声。
「…もういいでしょ…?さくま…」
そう言って、熱く膨れ上がった自身の先端を、ゆっくりとその入り口に当てがった。
その焼けるような熱さに、佐久間の肩がびくりと跳ねる。
いよいよこの長い前戯が終わり、本当の快感が始まろうとした。
まさに、その瞬間だった。
「…もういいよ、阿部ちゃん」
耳元で今までとは違う、どこか落ち着いた優しい声がした。
「頑張ったね」
その言葉と同時に、今まで下にあったはずの佐久間の体がするり、と体勢を変え阿部の上に、軽々と跨ってきたのだ。
完全に上下が逆転していた。
「……………は?」
阿部の口から間の抜けた声が漏れる。
何が起きているのか、全く理解ができない。
目の前には自分の上に乗り、悪戯っぽくそしてどこか勝ち誇ったように笑う、佐久間の顔があった。
彼は阿部の固まった体をいいことに、その熱く硬くなった存在を自分の手で、確かめるように、ゆっくりと撫で上げる。
「うわぁ、阿部ちゃんのおっきい〜笑」
「ぁ…っ」
そのあまりにも無防備で、直接的な刺激に、阿部の腰がびくりと跳ねる。
佐久間はさらに、楽しそうに阿部の耳元に囁いた。
「俺さぁ…いっつも阿部ちゃんのこと美人さんだなぁって思ってたけど…」
「ちゃーんと、男の子のものついてたねぇ」
その言葉は数時間前に、自分が言おうとしていたセリフの完璧なカウンターだった。
(…また、負けた…)
阿部の脳裏に、その三文字がはっきりと浮かび上がった。
攻めているつもりだった。
支配しているつもりだった。
しかし気づけば、またしてもこの男の掌の上で、転がされていたのだ。
もう笑うしかなかった。
阿部は天を仰ぎ、ははっと乾いた笑いを漏らす。
「…ほんと、敵わないな、お前には」
その完全な降伏宣言を聞いて、佐久間は、満足そうににぱっと笑った。
「でしょー?」
そして、
「じゃあご褒美。あげるね」
という言葉と共に、ゆっくりと腰を下ろしていった。
その瞬間、阿部の体を突き抜けたどうしようもないほどの快感と、幸福感。
もう勝ち負けなんてどうでもいい。
ただこの愛しくて、敵わない太陽のような存在に、身も心も全てを委ねてしまおう。
阿部は佐久間の腰を強く抱きしめて。
その夜、世界で一番幸せな敗北を受け入れたのだった。
コメント
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すごいな!こんな短時間で仕上げてしまうなんて! しかもサイコーにおもしろいし、話の繋がり方もスムーズすぎて感動! リクエストほんとにありがとう!! 次回も楽しみにしてます!
早!?てか最高です!👍